スパイスからつくる本格チキンカレーの作り方
夏は終わってしまいましたが、本格カレーのレシピです。
基本のチキンカレーとの大きな違いはトマトが入ること。時間も手間もちょっとだけかかるので、時間があるときにつくってください。
このレシピはインドカレーをアレンジしたもので、チリパウダーを使うのは熊谷喜八さんがオリジナルだと思います。チリパウダーは普通、カレーには入りませんが、鶏肉と非常に相性がいいのです。このレシピの肝なので、スパイスをカレー粉に変えると材料がぐっと減りますが、チリパウダーだけは別に準備して欲しいところ。(チリコンカーンにも使えますしね。間違えないとは思いますが、チリペッパーではなく、混合スパイスのチリパウダーですよ!)
トマトはフレッシュがおいしいのですが、ホールトマト缶を潰して使っても大丈夫。カレーなのでなんだっていいのです。
まずは肉をマリネします。フランス料理の場合、煮込みに使う肉はリソレといって、表面を焼きますが、この場合は焼かずにマリネして使います。
ヨーグルトという酸性の液体につけることで肉をやわらかくします。
焼いたほうがおいしいという意見もありますが、スパイスの風味を表に出すには焼かない手法もときには有効です。冷蔵庫で1時間以上マリネします。
そのあいだに玉ねぎを炒めます。
大量のオイルとバターが入ります。カレーは煮込み料理というよりも『オイル煮』ととらえたほうが正確です。中国料理もそうですが、水がよくない土地では油を使って料理することがままあります。
クミンと油を鍋に入れて、中火にかけます。イタリア料理ではにんにくとローズマリーとかをこうして油に入れて、火にかけたりしますが、どちらも油脂の酸化を抑える抗酸化作用がある食材です。一方のクミンは油の酸化を進める働きがあるのが面白いところ。スパイスの香りとお肉屋さんの揚げ物のような好ましい酸化臭が混ざった仕上がりがカレーの目的といったところでしょうか。
カレー粉を使う場合でもホールのクミンを使うと「(本格カレー)っぽい」仕上がりになります。「っぽい」仕上がりというのが結構重要です。
クミンからパチパチと音がしてきたら玉ねぎ、にんにくとしょうがのすりおろし、バター、少量の塩を投入して炒めていきます。
ここはちょっと丁寧に炒めます。
この玉ねぎの焦げ色とトマトの色がカレーの色になります。二十五分経過した段階で火を弱めてさらに炒めます。
これぐらいまで炒めます。トータルの時間は45分間。多少は焦げても問題なしです。カレー作りに慣れてくるとなぜか「炒め時間の短縮」か「材料のシンプル化」に向かう傾向がありますが、はじめのうちはゆっくりと炒めたほうが安全ですし、安定しておいしいカレーになります。何事も初心を忘れないことが重要です。火を止めて置いておけばメイラード反応がさらに進みます。
冷ました状態がこちら。再び中火にかけて、温め直します。
スパイス類を投入してさらに炒めて、、、
鶏肉をヨーグルトごと加えて、さらに炒めます。
トマトのすりおろしを投入。
水をすこし加えます。繰り返しますがカレーはオイル煮なので、水はかなり控え目です。
蓋をすこしずらした状態で弱火でコトコト、45分間。
蓋を完全にあけて仕上げにガラムマサラを投入し、さらに5分〜10分煮込みます。水分が多ければさらに煮込みましょう。この段階で気になるようであれば表面に浮いた脂を除去するのが簡単。
で、最後に塩を加えます。目安は小さじ1/2ですが、この塩がカレーの味を決めます。カレーは油が多いので、塩を多めに入れないと味が決まりません。どらくらいいれればいいのか、というのが一番むずかしいのです。そこでまずお玉一杯分くらいを取り出して、塩を加えて味見することを三回繰り返してください。限界を超えた、と思ったら、その手前が塩の適量です。
少量のカレーで練習して、適量がわかったら鍋に塩を加えて、味を調えます。おそらく想像よりも塩が一杯入ると思います。
出来上がり。ご飯にかけて食べましょう。インドではここまで時間をかけて、丁寧につくらない場合が多いと思いますが、これは西洋料理とインド料理のいいとこどりのカレーです。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!