cakes連載〈「 おいしい」をつくる料理の新常識〉第17回余談『究極のサンマの塩焼き』
cakesの連載、今回のテーマは『サンマの塩焼き』
サンマの塩焼きは定番中の定番。色んな焼き方があるけれど、目指すべき場所は「表面はこんがりと」「なかはジューシー」
サンマのジューシーさは水分ではなく、脂肪分に由来します。他の魚種と違って加熱しすぎても身は硬くならないのですが、脂が落ちるので長時間の加熱は避けるべき。高温、短時間で表面にこんがりと焼き色をつけ、最終的には予熱で内部の温度を75℃まで上げるのがベターでしょう。
炭で焼くのがベストという結論になりますが、今回はフライパンで焼く方法を考えてみました。ちなみにこのサンマ、手に持ってみて『ピンっ』と立つのが鮮度のいい証拠。とはいえ死後硬直がほどける前のサンマは焼き魚には向いていません。とれたての魚はイノシン酸が少ないからですね。だから、手に持ったときに少しくたっとするくらいのサンマが塩焼きにはむいています。かといって鮮度が悪いとイノシン酸がヒポキサンチンという臭みの原因に変わって、旨味が減少するので、あまりクタッとしすぎるのもだめですが。
cakesで紹介しているのはオーソドックスなサンマの塩焼き。これではお金はとれないので、noteではお金がとれる料理屋さん風のサンマの塩焼きをご紹介します。元ネタは銀座の日本料理店『矢部』のサンマの塩焼きから。
究極のサンマの塩焼きをつくるために、まずは背開きにします。腹から包丁を入れると内臓を傷つける恐れがあるからです。
背中から開いて内臓を抜きとります。ここから慎重に苦玉(胆嚢)と心臓を除去します。胆嚢を切るときに胆汁が出てしまうと、苦みが回ってしまうので注意。また、この時期のサンマは内臓のなかに鱗が入っている場合があり、それも除去します。(漁の時に他のサンマの鱗を飲むことがあるので)腹の内側にある脂身はスプーンでかきだしておいて、後で挟んでもOK。
その後、中骨を除去します。
本当は氷水に当てながら作業したほうがいいのですが、小骨をすべて抜きます。魚が傷むのでとにかく作業は手早く進めます。
きれいにした内臓を(好みで脂肪も)戻して、、、
閉じれば下処理は終了。
このままだと開いてしまうので、串を打って止めます。串は日本酒に浸しておくと焦げの防止になります。本当は一本で踊り串を打ちますが、今回は魚焼きグリルで焼くので半分に切って、串を刺しています。
薄塩を振ったら、すぐに焼きます。理想は炭火で焼くことですが、うちでは無理なので魚焼きグリルで焼きました。両面焼きなら7分。
焼き上がりです。こうして見ると、ちょっと鰻にも見えますね。
串を抜くときは回しながら抜きます。
盛り付けて、すだちを添えれば出来上がり。皿には載せていませんが、甘酢につけたガリか同じく甘酢につけた青リンゴの薄切りを添えます。
サンマの塩焼きを箸で食べるとどうしても身をほぐす形になってしまいますが、この調理法だと両側を皮で挟んだ状態で口に入るので、ジューシー感が強調されます。
骨がないのでがぶりとかぶりついてもらうので、口に入る体積が増えるのもメリット。人間が一番おいしいと感じる量は一口13〜15g程度。(ちょうどゴディバなどのチョコレートが一粒15gです)いつものサンマをワンランクアップさせる仕事です。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!