3ステップで簡単! おうちで本格汁なし担々麺
もともとは外国生まれでも、日本で発展、定着した料理はたくさんあります。担々麺もその一つ。本場の四川省では汁のない和え麺のスタイルが一般的ですが、日本に四川料理を広めた陳建民さんがラーメンのように汁を張ったスタイルを定着させたことは有名な話。
今回は本場のスタイルに近い、和え麺のスタイルの担々麺をご紹介します。ポイントは「たれを混ぜすぎないこと」です。乳化ではなく、油分が分離した状態のメリットを学べます。
担々麺
1.フライパンを中火にかけ、サラダ油(分量外)小さじ1とひき肉をほぐし入れる。広げるようにして焼く。片面に焦げ目がついたらほぐし、Aの調味料を加えてアルコール分が飛ぶまで加熱する。バットや皿などにあけて冷ます。
2.鉢に酢、醤油、烏龍茶、練りゴマ、炒りゴマ、食べるラー油、ザーサイのみじん切りを入れ、ざっくりと混ぜる。
3.鍋にたっぷりの湯を沸かし、生麺を袋の表示時間どおりに茹でる。茹で上がったら水気を切り、2の鉢に移す。肉味噌をのせ、コリアンダーの葉を盛り付ける。箸で混ぜながら頂く。
担々麺のたれを混ぜすぎないほうがいい理由
担々はかついだ天秤とその両端の荷物の意味。天秤でかついで売る、担々麺はいわばストリートフード。醤油、酢、ラー油や中国山椒、芝麻醤(チーマージャン)というゴマペーストでつくったたれを細いストレート麺に和えたシンプルな料理でしたが、日本で独自に発展し、バリエーションが生まれました。
美味しさの核は肉味噌とタレです。肉味噌は長く加熱しすぎないことが重要。ひき肉はいわば小さな肉の集合体で、長く加熱するとパサついてきます。かといって加熱が足りないと香ばしさが出ません。そこで片面焼きのようなイメージでまず底に焦げ目をつけます。ひき肉をフライパンに広げたら触らずに待ちましょう。
しばらく待っていると上にうっすらと肉汁が浮いてくるのがわかります。これは肉のタンパク質が収縮し、肉汁が絞り出ている証拠。この段階で肉の中心温度は60℃で、焦げ目もついているはずです。こうなったら全体をざっくりと混ぜ、調味料をからめます。調味料に入っている日本酒のアルコール分が飛べば出来上がりです。肉味噌は多めにできるので、冷奴やご飯にのせたり、麻婆豆腐のベースにもなります。
担々麺のたれは混ぜるだけです。練りゴマを使いましたが、中国のゴマペーストである芝麻醤を使ってもいいでしょう。ポイントはざっくりと混ぜること。練りゴマやラー油が浮いた不均一な状態にします。よく混ぜたものと適当に混ぜたタレを食べ比べると後者の方がゴマやラー油の風味を強く感じるはず。油の粒子が大きいほうが香りや味を強く感じるのです。
この現象は牧場を訪れて、搾りたての牛乳を飲むことでも実感できます。均質化処理をしていない搾りたての牛乳は脂肪分が低くても濃厚に感じるのです。ここに不均一であるメリットがあります。
練りゴマには瓶入りの製品とこのようなパウチ型の商品があります。練りゴマは放置しておくと固形分と油分が分離するため、袋の上から揉み込んで混ぜられるパウチ型がオススメ。瓶入りの場合もかき混ぜてから使いましょう。
担々麺の個性は2種類の辛さの割合で決まります。一つはラー油(辣油)の辣、これは唐辛子の辛さです。もう一つは花椒(ホアジャオ)の舌が痺れる感じの辛さ。こちらは辣ではなく麻と表現します。花椒は山椒の仲間ですが、日本の山椒よりもずっと強い香りと風味があります。
花椒は舌の神経を刺激し、舌に電気が流れたのと似たような状態にします。この刺激は素材の味を強調する効果があり、それが独特の美味しさを生みます。粉末が細かいほど味が強いので、痺れる辛さが好みの方はペッパーミルつきの製品を購入するといいでしょう。
また、今回は市販の味付けザーサイを加えましたが、本来は「芽菜」(ヤーツァイ)という漬物を使います。現地の人などは「これが入っていないと担々麺とは言わない」というほど大事な存在。通販などで入手できるので、興味がある方は試してみる価値があるでしょう。ザーサイではなく、市販の高菜漬けなどでもおいしくできます。
最後に麺について説明しておきます。今回は市販の伊府麺というかん水の入っていない卵麺を使いましたが、スーパーで売っている生麺であればなんでもかまいません。はじめに述べた通り、本来の担々麺にはストレートな麺を使うので、細めのうどんやそうめんでもおいしくできます。あるもので工夫すればいいのです。
湿っぽい時期は食欲も落ちがち。ここは一つ、刺激的な料理で乗り越えましょう。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!