食のデザイン『丸いプリンと四角いプリン、どっちが甘い?』
昨日は四角いプリンのレシピをアップしました。
さて、この四角いプリン。ちょっと甘さ控えめに感じませんでしたか?
丸いプリンと四角いプリンは同じ配合でも、感じる味が異なります。こうした現象を研究している人がちゃんといまして、オックスフォード大学の心理学者で研究者のチャールズ・スペンスさんが有名です。(『おいしさの錯覚』KADOKAWAという邦訳の本もあります)
味と形状の研究は小規模な実験室レベルでは行えるものの、大規模な被験者相手を対象とした実験デザインがなかなか難しい分野のひとつ。それでも『形によって味が変わる』のはたしかなようで、よく例に出されるのが2013年、英国のお菓子メーカーのキャドバリーが定番商品のチョコレートバーの形状を変更した際に起きた現象。
Source of photo(写真引用) https://www.dailymail.co.uk/news/article-2421568/Revolt-Cadburys-rounder-sweeter-bars-Not-classic-rectangle-shape-Dairy-Milk-changed-customers-also-sugary.html
上が以前の形状で、下がニューモデルです。すると消費者から「新しくなったチョコレートバーが甘すぎる!」とたくさんの苦情が寄せられ、ゴシップ誌(Daily mail)のニュースにもなりました。しかし、キャドバリー側は「レシピは変更していない」と反論。この事件をもとに書かれた論文がこちら。
スペンスさんは「この現象は人々の記憶が丸い=甘い、四角い=苦い、という風に結び付いていていることから起きた」と推論しています。人間はなぜ形と味を結びつけて考えるのでしょうか。この問いに対しては「人類の進化」を理由の一つとしてあげています。尖ったものは危ないですし、苦いものは毒です。反対に丸いものや甘いものは人間にとってポジティブなものが多く、人間が進化の過程で経験蓄積してきたそうした傾向が、味覚に影響を及ぼすのではないか──というわけ。
この推論が正しいのか、間違っているのかはわかりませんが、事象自体はテクニックとして他の料理やデザートにも応用することができます。つまり、同じ砂糖の量を使って甘さを強く出したければ食べ物「丸く」して、逆に甘さを抑えたければ「四角く」すればいいのです。
プリンは丸い形のほうがよりクリーミーに、四角いほうがサラッとした味になります。この性質を上手に使えば砂糖の量を控えて健康的なプリンをつくることもできますし、逆に大量の脂肪分や砂糖、香料を加えた生地をつくり、四角くすれば、病みつきになる味をつくることもできる、というわけ。例えばティラミスをはじめとしたリッチなチーズケーキや、セブンイレブンで購入できるイタリアンプリンなどはこれを利用したものと言えるでしょう。
普段のお菓子も形状にちょっと注意して観察してみると、いろいろと発見があります。食べ物の味は皿の上だけではなく、その他の要素も大きく関わってくるのです。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!