四角いプリンの作り方
シンプルな配合のプリンです。シンプルだけに2つの「火入れ」が出来上がりに大きく影響します。なんとなくシンプルなレシピの方が簡単そうに見えますが、実はそうではない、という話。
オーブン湯煎のメカニズムや容器による違いはこちらですでに解説しているので省略します。
四角いプリン
〈カラメルソース〉
砂糖 50g
水 30cc+大さじ1
〈卵液〉
牛乳 500cc
グラニュー糖 100g
卵 4個
本みりん 大さじ1
オーブンは160℃に予熱しておきます。さて、まずはカラメルソースづくりから。
カラメルをつくるときは「砂糖を加熱する」パターンと「砂糖に水を加えて加熱する」パターンの2つがあります。水を加えて加熱すると反応する時間を稼げるのでカラメルの風味が豊かになります。というわけで今回は水を加えてから加熱。
中火で煮詰めていき、色がうっすらついてきました。火を弱火に落として、ゆっくりと加熱を進めていきます。カラメル反応は火加減によっても風味が異なります。強火で一気に焦がすとただ苦いだけで風味が乏しい仕上がりになるので、ここは焦らずゆっくりと。
ここまできてもまだまだ加熱します。
このあたりから好みになるのですが、もうちょいいきたいところ。
このくらいで火を止めますが、鍋の予熱でも加熱は進むのでこの次の工程は手早く。
水大さじ1を一気に注ぎます。蒸気が出るので注意してください。
水はすぐにお湯になるので鍋を揺すって、カラメルを溶かします。これが1つ目の「火入れ」のポイント。しっかりと苦味がありつつも、焦げ味のないカラメルをつくることがおいしさの鍵を握ります。
熱いうちに型(今回は野田琺瑯製の保存容器、浅型Mを使用)に注ぎます。型をゆらしたり傾けたりして、ソースを広げます。多少、穴が空いてしまいましたが、加熱すれば溶けるのでとくに気にしなくても大丈夫です。前回の「座学」でやりましたがプリンづくりの難易度は容器によって大きく異なります。実はホーローはちょっと難しいので、初心者にはあまりオススメしません。(ホーローの素材は鉄なので90℃というちょっと高めの温度で加熱することになるので)ステンレス角バットを使うと失敗のリスクが減ります。
さて、卵液に移ります。
ボウルに卵を割り入れ、砂糖をすり混ぜます。すり混ぜるってなんじゃ、と思われると思いますが、これはお菓子作りによく出てくる用語で、泡立て器をボウルの底につけたままかき混ぜる作業を指します。空気を入れないで砂糖を溶かしたいときの動作です。
鍋で人肌まで温めた牛乳とみりんを注ぎ、さらに混ぜます。牛乳を温めるのは砂糖を溶かしやすくするためです。写真のように泡立てるのはNGです。静かに混ぜましょう。
とはいえ、泡立ててしまっても次の工程でリカバーできます。ザルで濾して空気を抜くのです。この工程で砂糖が溶けているかもチェックできます。ちょっと泡立ててしまったら、少し放置(20〜30分)すれば泡が表面に浮かぶので、それをとりのぞけば大丈夫です。泡があると加熱したときに膨張して「ス」(断面にできる気泡)の原因になります。
卵液をさきほどの容器に注ぎます。カラメルが固まっているので混ざることはありませんが、勢いよく注ぐと穴が空くので、ゴムベラにあてるようにすると安心です。表面に泡が浮いている場合はアルコールスプレーを吹きかけると消えます。
オーブンに入れてから、天板にお湯(蛇口のお湯で大丈夫です)を張り、湯煎の形にします。天板に湯を張ってからオーブンに入れようとするとこぼしたりするので、この順番は守りましょう。加熱時間は160℃のオーブンで25分〜30分。
揺らしてみるとちょっとゆるいかな、と思うかもしれませんが、意外と火は通っています。こちらが2つ目の「火入れのポイント」。加熱しすぎるとやはりス(=気泡)が入って、舌触りがなめらかではなくなります。プリンのおいしさは舌触りにあるのです。念の為、真ん中あたりに爪楊枝をさして、生地がついてこなければ出来上がりです。このあと、冷やすとある程度締まるので大丈夫。
蓋をあけた状態で10分ほど冷ましてから、プリンの容器を取り出します。この時間で予熱が働くので、それも計算に入れておきましょう。室温で粗熱がとれるまで冷ましてから、冷蔵庫で一晩置きます。このあいだに卵液から水分が出て、カラメルと馴染むのでおいしくなります。
粗熱をとる=とは、加熱直後の状態から、触ってみて暖かく感じる程度まで冷ますことを指します。
今回は撮影の都合上、一晩待っていられないので冷蔵庫で4時間冷やした状態がこちら。
四角く切り出します。プリンカップにいちいち注がなくても一気に焼けるのがこの形のメリット。シンプルな配合のプリンは大人向けの味。一つ一つの工程をしっかりと踏まないとおいしくはできません。(断面を観察するに写真はちょっと加熱しすぎですが自分で食べるので勘弁してください)
例えばこちらのレシピは卵を1個減らし、その分卵黄を多く配合しているので、多少加熱しすぎてもなんとかなりますし、プリンカップも小さめにしたので、外側と内側の温度差が少なく、加熱の見極めも簡単。もっと簡単にするなら卵液に少量の生クリームを配合すると、脂肪分が卵のタンパク質の結合を阻害するので、空気が抜ける時間が稼げ、なめらかな食感に仕上がりやすいでしょう。
しかし、カラメルの苦味がしっかりと利いた卵と牛乳だけのシンプルなプリンには作るだけの魅力があります。何回かつくってオーブンの癖などをつかめば上手にできるようになると思うので、挑戦してみてください。