〈新玉ねぎを使って〉白いオニオングラタンス ープ
新玉ねぎの季節です。
玉ねぎを使った代表的な料理にオニオングラタンスープがあります。飴色玉ねぎをブイヨンで伸ばしたスープにパンを浮かべ、チーズをかけて焼いた料理で、フランスでは夜食の定番として親しまれています。この料理には新玉ねぎは向かない、とされています。水分の多いのでメイラード反応がうまく進まないからでしょう。(実際はそんなこともないのですが)
ここでメイラード反応についておさらいしておきます。メイラード反応(アミノカルボニル反応)は褐変の一種。食べ物の褐変には酵素が介在する酵素反応と、介在し ない非酵素反応があります。例えばりんごを切って置いておくと茶色くなるのが酵素反応です。それを防ぐには塩水につけるか、ビタミンCを添加するなどします。前者は塩で酵素の働きを抑え、後者は失われるビタミンCを補うので、結果としてどちらの方法でも変色を防げます。
非酵素反応にはカラメル化とメイラード反応の2種類があります。カラメル化は糖単体の反応で、メイラード反応は肉を焼いたり飴色の玉ねぎで起きるアミノ酸と還元糖が反応です。
最近ではメイラード反応によって生成される風味化合物の生成に油脂が触媒として関わっているのではないか、と考えられています。昔から肉をロティするときに豚の背脂を巻きつけたりしていましたが、それはメイラード反 応を進めるのに有効ということ。
メイラード反応は一般的に「おいしい」反応ですが、デメリットもあります。それは 風味がみんな似てくること。メイラード反応によって生成される〈おいしい風味〉によって、素材の味の差がわかりにくくなってしまうのです。
というわけで今回、ご紹介する「白いオニオングラタンスープ」は玉ねぎをあめいろ になるまで炒めません。メイラード反応を抑えることで新玉ねぎの甘い香りを100% 活かすレシピです。
新玉ねぎ 2個(350g相当)
バター 30g
ローリエ 1枚
フルール・ド・セル 少々
〈グラサージュ〉
生クリーム 100cc〜120cc
卵黄 1個
EVオリーブオイル 少々
フルール・ド・セル 少々
パルメジャーノチーズ 少々
まず、玉ねぎのスライスは繊維を断つように切ります。できるだけ均一に。今回は食感を残すので、あまり薄くしすぎないようにします。
中火にかけた鍋でバターを溶かし、玉ねぎを加えます。ざっくりと混ぜてバターを全 体になじませます。
紙蓋をして加熱していきます。紙蓋をすることで上下を同時に熱することができますし、ある程度、香りが飛ぶので蓋とは違う仕上がりに。ぱちぱちという 音がしてきたら、火を弱めます。
途中、何度か紙蓋を外して中身をかき混ぜながら炒めること8~10分間。途中でローリエを加えます。今回は動物性のストックを使わないので、この香りが結構、重要です。
ちなみにローリエ、葉脈が放射線上に走っていますのでこんな風に縦にちぎって使います。小さなことですが、香りに差が出るので試してみてください。
すっかり玉ねぎがしんなりしました。透明感もでています。ここで水を600cc加えま す。水を加えたら火を強めましょう。
そのあいだに生クリームを泡立てます。
7分立てくらいに泡立った生クリームに卵黄、オリーブオイル、フルール・ド・セルを加えて混ぜます。
卵黄を加える事できれいな焼色がつきます。グラサージュとは焼色をつけるための材料のことです。
玉ねぎのブイヨンが沸きました。ここでしっかりと味見をしてから、塩で味付けします。フルール・ド・セルを3つまみほど加えました。若干、薄めに味をつけておいても大丈夫です。
オーブン皿やスープ皿、グラタン皿などにスープを盛り、グラサージュをスプーンで 三杯ほどかけます。生クリームは軽いのでスープに浮かびます。
仕上げにパルメジャーノチーズを少々、粉チーズでもいいですが、やはりパルメジャ ーノチーズがおいしいですね。オーブンのグリル機能かトースターで10分間。表面を 焼きます。
できあがり。表面の焼色がきれいです。
スープと味のついた表面の焼色を一緒に口に運びます。玉ねぎはわずかに食感が残 り、スープには甘味が出ています。シンプルですが、今の時期しか味わえない一皿。 今回は水を使いましたが、好みによっては鶏のブイヨンを使ってもおいしくできま す。でも、水と玉ねぎだけでおいしくできるのが新玉ねぎの良さという気もしますね。
撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!