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氷でおいしくなる〈かいわれ大根の煮浸し〉

煮浸しは〈煮て〉から地(味のついた出汁)に〈浸す〉複合調理で、ナスや小松菜などをやわらかく食べるときに用います。今回、紹介する〈かいわれ大根の煮浸し〉はそれとは違い、サラダ感覚で楽しむ料理です。秘密は氷水で出汁を急冷すること。加熱を止めることで、シャキシャキとした食感を残します。

かいわれ大根の煮浸し
かいわれ大根 1パック
出汁     200cc
醤油     大さじ1/2〜

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この料理、かいわれ大根以外にもセリや大根などいろんな食材でつくれるのですが、ぼくはかいわれ大根のピリッとした味が好きなので。マッチ棒の太さに切った大根を一緒に入れると、相乗効果でよりおいしくなります。

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出汁に醤油を入れて沸かします。塩梅としては淡め(吸い地が飲めるくらいにしたいので)ですが、醤油を大さじ1まで増やすと家庭料理っぽい味になります。しかし、家庭料理らしさを出すと塩分摂取量が増えるのは考えもの。料理屋さん風に出汁を利かせて、淡めの味付けにしたほうが健康的ではあります。あまり濃くすると素材の味が出汁に逃げるので、薄めにしたほうがおいしいのですが、これで塩味が薄いと思う方は濃口醤油を薄口醤油に変える、塩で味を補うなどして調整してください。

鰹節と昆布できちんととった出汁を使う場合はこの配合でいいのですが、出汁の風味が薄かったりするとなにかで味を補う必要があります。一番簡単なのはみりんで甘みをつけることです。甘みは旨味と同様に味にボリューム感が出せるので、みりんを醤油と同量入れましょう。それでも旨味が足りないと感じれば酒で補います。

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かいわれ大根を入れて10秒〜20秒。箸で混ぜていればすぐに色が変わり、しんなりします。

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ここでボウルに移し、氷水に当てて急冷します。ボウルを人差し指で回すと液体が撹拌され、ボウルの底にあたる面積も増えるのですぐに冷えます。ここで一気に冷やすのがコツ。煮浸しは氷でおいしくなる、という訳はここにあります。

動画で説明するとこんな感じです。昔は氷をこんなに潤沢には使えなかったので、こういう料理は冷蔵庫が普及してから生まれた近代日本料理です。長く浸けておくとかいわれ大根からエキスが出過ぎてしまうので、冷えたてを食べるのが美味しい。とはいえ、保存するなら地に浸した状態で冷蔵庫に入れておくと1日くらいは味が保てます。

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器に盛り付け、汁を張ります。鰹節を少量のせました。リムが広い器に盛ってしまいましたが、汁を一緒に味わうのでほんとは小鉢のほうがいいです。(すみません)

汁を味わうと大根のエキスが溶け出しているのがわかります。おひたしとどう違うのか、という話ですが、おひたしは〈具材を茹でる〉→〈冷やす〉→〈地に浸す〉という工程を踏みます。こちらは下茹でを省いているので素材の味がそのまま生きます。というわけでアクの少ない現代の野菜に適した調理法といえ、アクの強い昔の野菜には向かないでしょう。かいわれ大根。安価な割に火を通すと驚きほどおいしい野菜です。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!