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ジョエル・ロブション風のかぼちゃのクリームスープ

今日はカボチャのピュレスープをつくります。このレシピは先日(8月6日)亡くなったジョエル・ロブションさんのルセットをベースにしたオマージュ料理です。

かぼちゃのポタージュはアメリカ的な料理ですが、さすがにロブションスタイルは洗練された仕立て。アメリカ風との違いは

1,玉ねぎなどは入らず、シュエ(蒸し炒め)もしない
2.繋ぎ(リエゾン)には小麦粉や米などではなく、コーンスターチを使う

こと。

かぼちゃのクリームスープ
かぼちゃ   700gぐらい
鶏のブイヨン 800cc(水に市販のチキンコンソメ1個を溶く)
グラニュー糖 小さじ1
コーンスターチ 大さじ1(大さじ2の水で溶く)
生クリーム   大さじ1
バター     60g

ポタージュ向きのカボチャというとバターナッツスクワッシュなどがありますが、このレシピに限っては普通の西洋カボチャがいいと思います。

カボチャはスプーンで種をとります。

スープの色と口当たりが悪くなるので、皮を剥きます。皮を剥くときはこんな風にまな板において切るのが安全。

2.5~3cm角に切ります。ちょっと雑ですが、大きさを揃えることが大事です。

鍋にカボチャ、ブイヨン800cc、グラニュー糖小さじ1を加えて火にかけます。

沸騰するまでは蓋をして強火で加熱。沸点まで早く持っていくことでカボチャのくどい甘みが出ません。

沸騰したら蓋をとり、火を弱めて、18分間加熱します。ジョエル・ロブションは「カボチャは長く煮ると苦みが出てしまう。ハーブティーを煎じるように煮ることが大事」と言っています。

煮上がりました。ここにバーミキサーを差し込んでピュレにしてもいいのですが、ロブションスタイルはもっと丁寧です。

まずミキサーかフードプロセッサーにかけて、ピュレにします。

それを裏ごします。うらごすことでカボチャの種近くにある繊維が取りのぞかれるので口当たりが良くなり、皮の剥き残しの緑色の部分も取りのぞくことができます。

鍋に戻して火にかけて、強火で沸騰させます。アクがわずかに浮いていくるのでこの段階で除去します。一度、火から鍋を外します。

さっきアクを取りのぞいたとき「こりゃ面倒だな」と思ったでしょう。しかし、ここでコーンスターチを加えるので、アクをとっておかないともう混ざってしまうのです。この細部に注意を払うのがロブションスタイルです。

生クリーム(脂肪分45%)を加えます。

泡立て器で混ぜながら加熱します。

コーンスターチが入っているので一度、しっかり沸騰させます。沸いたら火を止めます。

いよいよ仕上げです。バーミキサーを差し込み、冷たいバター(60g)を加えてモンテ(バターを乳化させること)します。このバターのお陰で味わいが逆に軽くなります。

最後に塩、白胡椒で味付けしますが、ブイヨンに塩が入っているので、注意しながら加えてください。

少量入ったコーンスターチのお陰で口触りは滑らかで、しかも時間が経っても分離しません。ちなみにカリフラワー、アスパラガス、そら豆なども同様にピュレスープにできます。どれもシュエしないのがポイントです。(ただし、玉ねぎとポワローはシュエします)

この料理、一つ一つの工程を構築的にくみ上げていくという部分で、典型的なロブションスタイルの料理だと思います。ロブションさんというと円形にしたジャガイモとトリュフを並べたり、緑のソースでドットを書いたりといった精緻な部分が強調されますが、本質はそこではなく、ジャガイモのピュレとグリーンサラダに代表されるようにごく一般的な素材もガストロノミー(美食)に値することを証明したことが最大の功績だと思います。

もう一つ「すごいなぁ」と思うのはこのカボチャのスープのように古典的なレシピを洗練させたこと。以下は作家のマイケル・ブースがロブションさんの店に研修で入った時、ガスパッチョをつくることを命じられた時の話。

作業が終わるころには、スペインのトマト投げ祭りに行ったみたいに、全身真っ赤になっていた。
大変な作業だったが、ロブションのガスパチョになにが入っているのか、いや入っていないのかがわかって、いい勉強になった。
シンプルさはロブションの料理の重要な要素だし、一切の無駄を排した彼のアプローチは、いろんな意味で見事で、とても現代的だ。だがいったん彼のやり方を知ってしまうと、あんなに簡単につくれることがわかって、正直ガッカリしてしまう。
(中略)地中海の食材で手軽につくる彼のメニューは、はっきり言ってしまえば、ジェイミーオリバー臭がプンプンするのだ。
(『英国一家、フランスを食べる』より)

たしかにロブションさんの料理は実はシンプル。マイケルブースはがっかりしたようですが(笑)料理のモードが動いていくなか、スペイン料理や日本料理といった他のジャンルの要素を軽やかに取り入れていくクレバーさもロブションさんの料理の凄みでした。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!