ツリークライミングの大会って「なに」を競い合ってるの?
「ツリークライミング」は「木登り」のこと?
YES ! !
「ツリークライミング」は「木登り」を英語にしただけであって特別な単語ではありません。が、「ツリークライミング」と言うと、ロープやハーネスなどの専用のギアを使用して木に安全に登ること、またはその技術そのものを指すように思います(個人的見解)。なんとなくおわかりかもしれませんが、子供が公園や庭などの木に丸腰のまま登って行くのとは異なる意味で使われるって感じです。
単語の定義はそれほど重要ではありませんので、この程度にしておきましょう。
今回は、「ツリークライミングチャンピオンシップ」つまりツリークライミングの「大会」について書いていきたいと思います。
木登りの大会は「どんなことを競うのか」「どんな種目があるのか」など、種目の内容をメインに紹介していきます。
大会の概要
名前の通り、大会では、ツリークライミングの技術を競います。大雑把な言い方になってしまいましたが、一言で言おうと思うと意外と難しいです。定められた安全性を保った上で、樹上でのロープワークにおける身のこなしや、判断力、正確性、コミュニケーション能力、速さなど、総合的に多面的な観点でクライミング技術を競います。以降を読んでいくうちに、なんとなくわかっていただければ幸いです。
出場する選手は、日頃から木に登って仕事をしている人がほとんどだと思います。例えば、伐採や剪定、樹上の生態系調査、ツリークライミングの講習やレクリエーションイベントを行う方々などが出場しています。出場者の職業は様々ですが、使っているギアや安全管理の点では、共通している部分が多く見られます。
ちなみに、ツリークライミングチャンピオンシップ(Tree Climbing Championship 以下 TCC )と呼ばれるものは、ISA (International Society of Arboriculture)という国際団体が定めたルールに則って行われる大会のことです。
ツリークライミングに関する大会はいろいろな種類があります。この ISA が定めたルールを使用していない大会ももちろんあります。が、とりあえず、今回は、この狭いツリークライミング業界の中でも、最も競技人口が多いと思われる大会であろう TCC についてお話ししていきます。
英語のルールブックは存在しますので、こちらに貼っておきます。細かいルールが山のようにあって、ちゃんと読むと大変です。なので、今回は、競技がどんなものなのかを、細かい部分は多少省きながら解説します。細かいルールについてはまた気が向いた時に別の記事として書きたいと思います。
ITCC とは、International Tree Climbing Championship のことで、いわゆる「世界大会」のことです。世界大会では、このルールブックに忠実に則って競技が行われます。各国で行われる「地方大会」的な大会でも、概ねこのルールに則っていますが、その地方大会でのみ採用されている、独自ルールもわずかに存在します。それほど大きな違いはないので、あまり気にせずにいきましょう。
予選は5種目で争われます。選手は5種目全ての競技を行います。その合計点の高い上位数名が、翌日の決勝に進みます。大会の規模により、決勝に進む人数が異なりますが、男子は3〜5人、女子は1〜4人です。
※予選の5種目書いただけで割と長くなってしまったので、決勝( Masters' Challenge ) については、やや軽めです。詳しくは、また別の記事で書けたら書きます。(書けたらの話ですが笑)
5種目の最高点(満点)はそれぞれ異なります。
ワーククライム (80点)
エアリアルレスキュー (50点)
スローライン (35点)
アセントイベント (25点)
スピードクライム (10点)
合計で200点満点のうち何点取れたかで予選の順位が決まります。5種目の中でも種目によって大きく配点に差があり、最高点の高い種目でいかにハイスコアを出せるかで、予選の順位も大きく変化していきます。
予選の種目
5種目の競技の説明をします。
できるだけわかりやすく解説します。頑張ります。
と、その前に、
ギアチェック ( Gear check )
ギアチェックは、競技の一つではありません。大会が始まる前に、大会で選手が使用するギア「全て」が安全であるかを、一つ一つ厳しくチェックするものです。ISA が採用してる安全基準に沿ってチェックをします(後述)。
まず安全が第一でなければいけません。競技中にギアが壊れて選手が落下するようなことがあってはなりません。ジャッジが一つ一つ目で見て、触って安全性を確認し、合格になったギアのみが、大会での使用を許されます。
主に、ライフサポートギア、つまり命綱のように「これが壊れたら大事故になったり命を落とす可能性がある」ギアのチェックをします。経年劣化や破損などによる安全性の低下がないかをチェックします。簡単に例をあげると、ロープはほつれていたりしないか。カラビナや金属のギアにヒビが入っていないか、ヘルメットは変形していないか。などです。ちゃんと説明すると長くなるので割愛します。
普段仕事で使用しているギアの多くは大会での使用も許可されていますが、中には大会での使用が許可されていないものもあるので要注意です。
詳しく読みたい方はほとんどいらっしゃらないかもしれませんが、念の為、詳しいことが書いてある資料を添付します。英語ですが。
↓使用が許可されているギア、許可されていないギア
↓ギアチェックに臨むにあたって
ここまで長くなりました。
やっと競技の紹介です。
以下でご紹介する5種目を、どの順番で行うかは大会やエントリーナンバーによって異なります。この記事では、配点の高い順にご紹介します。
ちなみに、競技開始の前に、ウォークスルー( Walk through )というものがあります。全員で会場をひと回りし、各競技のセッティングや、実際に競技するときに気をつけるべきことなどをジャッジから説明されます。この時に質問があれば、ジャッジに質問することができます。
1. ワーククライム ( Work Climb )
ワーククライムは、樹上の決められたアンカーからスタートし、4つのチェックポイント(ステーション)を回って、着地するまでの競技です。
樹冠内のあちこちにステーションが設置されており、各ステーションのベルを鳴らして下りていきます。それぞれのステーションに行くまでのロープワークや身のこなしの正確性、無駄な動きや危険な動作がなく、スムーズでエレガントに動き回れているかなども採点の対象として見られます。
この競技が最も配点が高く、80点満点。
決勝に行く選手は55〜70点程度は取ってきます。
< ステーションの紹介 >
それぞれのステーションにおいて、どのようなステップで得点を重ねていくかを紹介します。
*ハンドソー ステーション ( Handsaw Station )
ベルに近づいたら、ランヤードをします。
「スタンドクリア!( Stand Clear! )」と地上のジャッジに向かって声をかけます。
「オールクリア!( All Clear! )」と地上のジャッジから返答を聞いて、
両手でハンドソーを持ち、ベルを鳴らします。
*リムトス ステーション ( Limb Toss Station )
ベルに近づいたらランヤードをします。
「スタンドクリア!( Stand Clear! )」と地上のジャッジに向かって声をかけます。
「オールクリア!( All Clear! )」と地上のジャッジから返答を聞いて、
両手でハンドソーを持ち、ベルを鳴らします。
ベルの近くに用意された小枝を、地上に設置されたボックスに向かって投げ、2投目以内に枝がボックスに入るとボーナスポイントが入ります。
*ポールソー ステーション ( Pole Pruner Station )
ベルに近づいたらランヤードをします。
「スタンドクリア!( Stand Clear! )」と地上のジャッジに向かって声をかけます。
「オールクリア!( All Clear! )」と地上のジャッジから返答を聞いて、
設置された長柄ノコを取り外し、両手を使って長柄ノコでベルを鳴らします。
元あったように長柄ノコを戻します。
*リムウォーク ステーション ( Limb Walk Station )
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