イタリアでスリ集団に狙われてから撃退するまでのお話し。
ご年配ご夫婦からアテンドのご依頼を受け、2週間のヨーロッパ個人旅行に同行。この旅行の最終目的地であるヴェネツィアでのお話し。
僕とご夫婦の3人は列車でサンタルチア駅に到着。水上バスに乗るためスーツケースを引いて停留所にたどり着くと凄い人混み。そしてその数分後、若い女性3人組が僕の視界に入ってきた。服装は他のイタリア人と同様で見た目は完全に周囲に溶け込んでいる。ただ……顔立ち、目つきと視線、表情、3人の立ち位置、3人の関係性など、僕的には何か不自然さを感じる。
世界を75周以上も旅していると自然と状況察知する感覚が研ぎ澄まされるもので、僕の予感は本当によく当たる…。
僕はご夫婦に「怪しい人がいるのでリュックは前に背負ってカバンのファスナーには手を添えておいて下さい」と指示。
奥様はすぐ指示に従ってくれましたが旦那様はリュックを背中に背負ったままで、わかりやすい程に警戒心ゼロ…。人の意見を全く聞かず何度も言うと怒り出だす性格でいらっしゃるため、僕が旦那様を注意深く見守れば大丈夫かと考えていた矢先、ご夫婦の真後ろに3人組が並んできました。
「やっぱり当たったか。これはロックオンされたな…」
疑惑から確信に変わり、ご夫婦がターゲットになっている旨をご夫婦に伝え、僕もご夫婦とスリ集団から目を離さずに監視レベルMAX。
スリ集団との睨み合い
さすがは手慣れたスリ集団、僕が監視していることに3人も気付いたようで、僕とスリ集団の目が何度も合うことに。それでも諦めずに僕たちから離れようとしない。「ターゲットに定めた獲物は絶対に逃さない」という自信すら感じる。かなりたちが悪い相手のようだ。
しかし、スリのプロと言えど僕が常に監視しているためご夫婦にはなかなか手を出せない。そんな睨み合いが5分以上続く。
その時 事態が急変!
水上バスが停留所にやってきて大勢の人がボートに流れ込む瞬間、事態が急変!
人の流れに紛れてスリ2人が強引に僕の前に割り込んで僕の身動きを封じ、残りの1人がその隙に旦那様の真後ろに。わずか2~3秒の出来事。
「ヤバイ!! やられる!」
スリ集団は旦那様にターゲットを絞り込んでこの瞬間を待ち続けていたのか…。見事に僕と旦那様は引き離され、完全に無警戒の旦那様は一人でスタスタ前に進んでしまう…。狩りの準備が整った…。
実は旦那様は耳が良く聞こえない。周囲の雑音も凄く、僕の1m先にいる旦那様に大声で注意を呼び掛けても無駄。しかし時間がない。
「ちょっと手荒いが実力行使するしかないな…」
この判断まで1秒。
僕のスーツケースを目の前に立ちふさがるスリ集団の足元(素足にサンダル)に勢いよくぶつけ、相手が痛みで叫んで怯んだ隙にスリの2人を押しのけて僕は旦那様に接近することに成功。
ちょうどその時、旦那様のリュックのファスナーが開けられた瞬間だった…。そのリュックには財布が入っている。
僕が旦那様の背後をガードしたことでスリ集団も諦めて退散。
間一髪で間に合った!! 5秒遅れてたら多分やられてた…。
スリ集団残念だったね。僕を誰だと思ってるんだ。
陸路でアジア横断、中南米や中東で鍛え抜き、ヨーロッパで刺されても帰国せずに旅を続けパキスタンで自動小銃の射撃訓練まで受けた100戦練磨の旅人だぞ! お前らに負けるわけないだろ 笑
とは言え、僕と旦那様を引き離した連係プレーはお見事。
僕の前に割り込んできてからわずか10秒ほどの出来事。本当に一瞬。これじゃあ観光客はやられるよな…。
ちなみに旦那様、今回の出来事をお伝えしたものの「へぇぇ~」とニコニコしてました…。まるで他人事で状況を理解できてないご様子。マジか…。
ヴェネツィアはイタリアの観光地の中でもトップレベルの治安の良さで、物価が高いことや島という立地の関係で今までスリ集団(ジプシー)はいませんでしたが、この出来事をホテルの人に伝えたら「え! 島にジプシーがいたの??」と驚いてました。僕もヴェネツィアに行き来して20年近いけど、ジプシーによる被害は今までに1度も聞いたことが無い。
残念ながらついにヴェネツィアにもジプシーが侵入しているようなので、行く方は混雑している場所で十分にご注意を。
他人を守ることの難しさ
自分の身を守るのは慣れていて状況察知は体が覚えています。だから瞬時に「何か嫌な予感するな…」「コレ危なそうだな」と直感が働く。
しかし、他人を守るって難しいと今回思った。特に警戒心が無く自分で自分の身を守る気が無い無防備な人を守るって至難の業だなと…。複数のスリに連携されたら更に不利。
事は本当に一瞬で、声を掛けて注意を即す余裕すらない状況。5秒あればスリの仕事は完結する。
やはり他人を守る上で重要なことは、どんな危険があるのかを相手に理解してもらうことですね。まぁ、今回は言っても聞かない方だったので仕方なしでしたが…。
スリ集団(ジプシー)がいた場所とジプシーの特徴
サンタルチア駅を背に右奥にあるヴァポレット停留所 E の乗り場。
この乗り場はサンマルコ方面の各駅停車 1番 の乗り場で、特に観光客で込み合う路線&乗り場です。
今回見たジプシーは20~30代で身長150~160の女性3人組。比較的小奇麗な格好をしていてぱっと見で観光客に見えなくもないです。顔立ちはやっぱりジプシーが入ってます(ヨーロッパとインドの顔立ちを混ぜた感じ?)。ただ、一昔前はパッと見でわかるぐらい特徴があったけど現在は服装も髪型も周囲と同じで見た目では気づきにくいかも。
スリ対策はどうすればいい?
対策としては、「隙を作らない」と言うしかないですね…。隙だらけの人がロックオンの対象です。両手がふさがっていたり、格好やしぐさから警戒心が無さそうな人が狙われます。
特に、空港や大きな駅では要注意。
これらの施設で大きな荷物を持っているということは長距離移動をしてきたということ。そして長距離移動後は疲れてますから注意力が落ちています。更に荷物が多いのでつい荷物を床に置いてしまうことが多いです。
スリはそれらを全て知っている。だからこれらの場所を狙う。
つまり、スリにとって格好の仕事場なのです。
あとは目線に気を付けましょう。遠くの景色を眺め続けるのはダメです。何故なら、遠くを見ているということは自分の手元・足元は視界に入っていないことを意味しています。だからスリは貴方の目線を見ています。そのため、サングラスをかけているとスリは手を出しづらい。目線がわからないためです。
その他の対策としてはこんなことにも意識してみてください。
・街中で地図を見る時は道の端っこで、又は店内に入ってから見る
・服に何か付いていると声をかけられても脱がない。バックも開けない
・写真を撮っている時はスリに狙われるリスクが高い
・混むことが予想される場所ではズボンのポケットに何も入れない
・列車やバスの降り口のドア近くはスリ、ひったくりに狙われやすい
・街中で声を掛けてくる人物には要注意。何か企んでる可能性も
・外国人観光客である貴方に道を尋ねてきたら近くにスリ仲間がいるかも
それ以外にもこんなコンテンツを作っているので興味がある方は是非参考にしてみて下さい。
▼ 海外旅行での注意点やマナー 日本とは違う世界の常識・非常識
とにかく自分の身を守るのは自分というのが鉄則!
基本さえ守れば特に難しいことは何も無いので、十分に対策を講じて旅行を楽しんでもらえればと思います。