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【アート鑑賞】田名網敬一 記憶の冒険

2024年8月9日、六本木の国立新美術館で開催されている「田名網敬一 記憶の冒険」に足を運んだ。後の8月20日に知ることになったが、その日はくしくも田名網敬一の命日となった。享年88歳。

展覧会のエントランス

亡くなる直前まで元気に準備していたという展示内容はとにかくパワフルで圧倒的なボリュームである。

会場の様子1
会場の様子2


9月1日に放送された「日曜美術館」では、田名網敬一が作品を制作する過程を垣間見ることができた。まず、大きなアトリエというより、普通のマンションの一室で制作されていることに驚いた。部屋には、コラージュで貼り付けるキャンバス地の素材が大量に用意されている。制作を開始すると、床に新聞紙を敷き、その上に大きなキャンバスを置いて準備する。そして、キャンバスの上に市販の木工用ボンドを大量に垂らし、素手でボンドを慣らし、凹凸をなくす。最後にキャンバスに切り抜きを貼っていく。

キャンバスの上を軽やかに跨いで作業が進む。「アートは肉体労働」と言われていたが、まさに手作りで制作されている様子が見てとれた。

この作品もマンションの一室で手作りされていた

同番組では、「編集的絵画」についても言及された。田名網敬一の作品は、大量の記憶が再編集されている。

太平洋戦争の時の、都内から新潟への疎開、B29による爆撃、赤い焦土などの記憶が地層の底にある。

加えて、田名網敬一の作品では、戦争体験だけでなく、アメコミや映画など、戦後の米国の大衆文化への憧れが一緒に描かれるのが特徴的である。

さらには、日本の過去やその時代の文化、世界の現代アート等が入り混じり、独自の世界を作り出す。

戦争中の飛行機や戦後のアメコミ、日本文化などがごちゃ混ぜにコラージュされている
どこかしら地面が廃墟のようにも見える


この展覧会では、田名網敬一が社会にでた時代から遡ってたくさんの作品が展示されている。グラフィックデザインを手掛け、ポップアートを好み、ウォーホルのシルクスクリーンの展開に刺激を受けていたそうだ。

ポップアートな時代


また、直近のコロナ禍では、ピカソの模写に取り組んだ。なんと700点。圧倒的な量である。単なるコピーではなく、藤田嗣治も使ったという日本画で使う面相筆を使ったりしている。

ピカソの模写
すべてピカソの模写!


戦争体験をリアルに描いて欲しいとの依頼に、どうしてもリアルは描けなかったそうで、嘘の世界で本当を描くことを選んだという。

赤塚不二夫さんとのコラボ

この展覧会は圧倒的な点数があるのだが、その一つ一つの情報量もものすごい。一度だけでは足りない、もう一度行ってみたい、行かないといけないと思った。

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