Shigeru Matsuo

自己紹介

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最近の記事

【アート鑑賞】田名網敬一 記憶の冒険

2024年8月9日、六本木の国立新美術館で開催されている「田名網敬一 記憶の冒険」に足を運んだ。後の8月20日に知ることになったが、その日はくしくも田名網敬一の命日となった。享年88歳。 亡くなる直前まで元気に準備していたという展示内容はとにかくパワフルで圧倒的なボリュームである。 9月1日に放送された「日曜美術館」では、田名網敬一が作品を制作する過程を垣間見ることができた。まず、大きなアトリエというより、普通のマンションの一室で制作されていることに驚いた。部屋には、コラ

    • 【読書感想文】昭和16年夏の敗戦/虎に翼

      2024年8月15日、終戦記念日、猪瀬直樹さんの「昭和16年夏の敗戦」を再読した。朝の連続テレビ小説「虎に翼」において、岡田将生さん演じる航一が、総力戦研究所での経験をトラウマにしている事で再注目されている。 総力戦研究所は、1940年に内閣総理大臣直轄の研究所として溜池山王の首相官邸の近くに設立された。翌1941年4月に一期生を迎え、航一のモデルとされる三淵乾太郎はじめ、官僚や公的機関、大手民間企業から、30代の有望な人材、36名が集められた。 1941年7月から、研究

      • 【読書感想文】都市に侵入する獣たち

        先日、軽井沢を訪れた際、町が提供するクマのマップを見て、野生動物が居住地のすぐ側にいることを実感しました。 普段の都会生活では意識することのない人間と野生動物の距離の近さに驚き「都市に侵入する獣たち」という本を手に取りました。 本書を通じて、都市における人間と野生動物の関係の変遷や、共生に向けた取り組みについて学ぶことができました。 野生動物の都市進出の歴史 野生動物の都市への出現は、1970年頃から、ヨーロッパ、北アメリカ、一部の東アジアで見られるようになったそうで

        • 【アート鑑賞】【旅行記】軽井沢安東美術館

          2022年秋にオープンした軽井沢安東美術館を訪問。素晴らしかったです。   場所は軽井沢駅から歩いて数分の矢ヶ崎公園の大賀ホールの近く。 軽井沢安東美術館は、安東夫妻が20年に渡ってコレクションしてきた藤田嗣治の作品だけを対象にしています。 安東泰志さんは、メガバンクから米国経営大学院を経て投資ファンド・ニューホライズン キャピタルを率いて、かず多くの再生案件を手掛けられた。そんな中、藤田作品に心を安らげられたそうです。 展示からは、藤田嗣治(レオナール・フジタ)の生

        【アート鑑賞】田名網敬一 記憶の冒険

          【映画感想】「ルックバック」子育て目線の過去と将来と

          冒頭から泣ける。どんな人も自分を振り返って、子供時代や青春を思い出すんじゃないかと思う。そして、子育てという目線で見ると二重に泣ける。 親目線では、我が子が寝食を忘れて何かに打ち込む尊さを分かりつつ、お友だちと遊んだりスポーツしたりして無難に成長するのも良いのではと思ってしまう。 どちらにしても、子どもが選んだ道を応援するのだろう。 本作では、どっちの道を選べばよかったのか?ルックバックで両方見ることができる! でも結局、自分自身で乗り越えないといけない時が来る。我が

          【映画感想】「ルックバック」子育て目線の過去と将来と

          【読書感想文】なぜ働いていると本が読めなくなるのか

          ここ数年のベストオブ新書ではなかろうか。後半は感動的ですらありました。 人生にはノイズこそが重要本書の冒頭、坂本裕二さん脚本の「花束みたいな恋をした」の一シーンが引用される。就職して仕事が忙しく、学生時代に好きだった小説や漫画からだんだん遠ざかり「パズドラ」しかやる気がしないという若者。筆者はそこから「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という問いを立てる。 そして、明治、大正、戦前戦中、高度成長期、バブル期、90年代、2000年代といった各時代を振り返り、どんな人がど

          【読書感想文】なぜ働いていると本が読めなくなるのか

          【映画感想】ミッシング

          土曜の朝の六本木ヒルズで、昨日公開された映画「ミッシング」を見た。 石原さとみが「自分を壊してくれる」と7年前に吉田監督に出演を頼み込み、一度は断られたものの実現に至ったという本作。石原さとみの壊れっぷりを見てみたいと思っていた。 「娘が失踪し、出口のない暗闇に突き落とされた家族。どうにもできない現実との間でもがき苦しみながらも、その中で光を見つけていく」という公式な説明だけでも重い。 見終わって、ネットの反応を見ると、感情移入できないとか、重すぎるとか救い用がないとか

          【映画感想】ミッシング

          【旅行記】 葉山に住むという選択肢

          ゴールデンウィークの谷間、7年前に葉山に移住した友人を訪ねた。 葉山に行くには、車を使わない場合、逗子駅が最寄りとなる。横須賀線や湘南新宿ラインを使えば、東京や新宿から直通で1時間で到着する。乗車料金は東京や新宿から1000円弱で、さらに1000円プラスすればグリーン車に乗れるのでさらに快適だ。 逗子駅から葉山方面へは京急バスに15分ほど乗車する。1時間に3本か4本ほど走っている「海岸回り」という路線を使う。バスに乗る時は後ろから乗車して、降車する時は前から降りる。乗車時

          【旅行記】 葉山に住むという選択肢

          【映画感想】悪は存在するか

          唐突に突き放され、頭を整理するまでしばらく時間がかかる。問いが投げかけられ、どのように解釈するかは見た人に委ねられている。 2日経って、私としては「自然への畏怖」、「寓話」と解釈した。 前半で美しい自然の映像が続くが、どこか怖い自然も内包されている。自然の怖さへの伏線が繰り返される。後半では前半をなぞりつつ怖い自然が姿を見せる。 単なる都会対田舎、文明対自然の争いにとどまらない深さがある。 巧は、バランスを壊すことへの「反動」、寓話風にいえば「たたり」を恐れたのではな

          【映画感想】悪は存在するか

          【映画感想】オッペンハイマー

          公開初日のオッペンハイマーを鑑賞。 科学技術のジレンマ 原子爆弾というかつてない大量破壊兵器が産まれた過程が詳細に描かれる。理論に傾倒していたオッペンハイマーにとって、ピカソやマルクスのような革命的なアイデアを夢見ていたようにも思える。爆弾としての現実が近づくと、「物理学300年の集大成が大量破壊兵器なのか」という問いが重くのしかかる。 賞賛と転落、そして嫉妬 オッペンハイマーの人間的な物語として、賞賛される立場から批判される立場へと転落する過程が描かれる。ありがちで

          【映画感想】オッペンハイマー

          アートフェア東京2024感想メモ

          金曜日の夕方にアートフェア東京に行ってきました。ざっと感想のメモです。 今回もっとも印象に残ったのは、FUMA Contemporary Tokyo。金巻芳俊さん、山田航平さんの作品、素晴らしかったです。 そして、SH GALLERYはさすがです。Backside works.さんの作品が充実。この後のギャラリーで開催される個展にも足を運ぶことになりそうです。 kaikaikikiのMr.さんも目立つ展示。 バルーン🎈が一際目立ったKoichi yamamura ga

          アートフェア東京2024感想メモ

          【現代アート鑑賞】養蜂と現代アートを考える(團上祐志さん)

          ART FAIR TOKYO 2024を訪問。今年は現地でコレクターの友人たちと落ち合い、ギャラリストやアーチストの方とも会話することもできた。さらには、そのメンバーでフェアを出て、現代アーチストで起業家の團上祐志さんのアトリエを訪問した。 團上さんは、武蔵野美術大学の油絵学科在学中に渡米しニューヨークで展覧会を開催、帰国後に愛媛県の大洲で古民家を活用したアーティストインレジデンスを手がかけられるなど、アートと文化とビジネスの架け橋となる活動をされている。 雑誌Forbe

          【現代アート鑑賞】養蜂と現代アートを考える(團上祐志さん)

          東京都美術館「印象派 モネからアメリカへ」

          東京都美術館の「印象派 モネからアメリカへ」を訪問。作品の写真撮影は不可のため、感想のメモだけ。 モネとも交流し、印象派をアメリカに伝えることに貢献したジョン・シンガー・サージェント。肖像画を得意としたそうだが、「キャサリン・チェイス・プラット(1890年 ウスター美術館)」は、ドレスの白が美しくて印象に残った。 アメリカの印象派として代表的なフレデリック・チャイルド・ハッサム。「コロンバス大通り、雨の日(1885年ウスター美術館)」は、雨に濡れた石畳みが特に美しい。フラ

          東京都美術館「印象派 モネからアメリカへ」

          PERFECT DAYSのような日常のひとコマの記録20240130

          2024年1月30日、井の頭公園の片隅でフクジュソウが咲いているのを見つけました。 この時期になると、春の訪れを感じます。子どもが幼稚園の頃「二月の庭には福寿草🎵」という唄を歌っていたのを思い出します。 今日、フクジュソウの写真を撮ろうとしたら、ご老人が先にカメラを向けていました。つい私から「今年も咲き始めましたね」と声をかけたところ、ご老人は「そうなんです、一昨日は咲いていなくて、昨日は来られなかった、今日来たら咲いてたんです」と嬉しそうに教えてくれました。よくお顔を見

          PERFECT DAYSのような日常のひとコマの記録20240130

          【経営学】入山教授の講演「イノベーション創出への示唆」メモ

          今年も新年の「稲門経済人の集い」に参加。大隈講堂に参集しました。以前に上場企業の子会社の代表取締役を務めていた時にはじめて招待されました。参加者名簿にはそうそうたる大企業の代表が並び、かなり気後れするアウェイの場ですが、少しずつ仲間を増やしながら参加を続けています。 田中総長からのご挨拶、冒頭は能登地震の犠牲者の方に全員で黙祷を捧げました。続いて2032年の創立150周年以後のビジョンについてご紹介。大隈重信が1912年に述べた教旨〜学問の独立、学問の活用、模範国民の造就〜

          【経営学】入山教授の講演「イノベーション創出への示唆」メモ

          PERFECT DAYSを見ると日常生活がちょっと楽しくなる

          PERFECT DAYSを見ると日常生活がちょっと楽しくなる。トイレ掃除や木漏れ日にワクワクする。毎日のルーチンが大切に思える。 起床から就寝まで、主人公の平山の生活はルーチンでできている。それはミニマリズムでもあり、善の精神であるかもしれない。 自分も、自然の写真を撮ったり、同じ場所で食事をしたりしているが、誰もがルーチンを持っているし、主人公の平山の生活に自分を重ねる人も多いのではないか。 2023年12月22日公開の「PERFECT DAYS」 は、ヴィム・ヴェン

          PERFECT DAYSを見ると日常生活がちょっと楽しくなる