睡魔のいいなり
(2024/10/18)
急げ、はやくはやく。
睡魔がわたしを急かしながら追いかけてくる。もうそろ、やつに身を乗っ取られて筆が止まってしまう。
ねむけなんて可愛い名前で呼ぶものか、おまえは魔だ、鬼だ。わたしは起きていたいのに、どうして邪魔をしようとするのだろう。
奴がいいやつだとしよう。
寝て脳を休めると、その間に記憶の整理をしてくれて、からだの疲れもとれるのだ。台詞をつけるなら、明日もがんばろうなぁ〜、だろうか。
正直なところ、寝て起きて初めて感じるのは身体の重さと肩こり、そしてうっすらと煙のように倦怠感が身を包んでいる。
そいつにがんばれと励まされずとも頑張る。
それに、そもそも休まねば次の日動けない欠陥を抱えた身体に進化したのは何故だ、おまえなら知っているのか?と問いたい。長い間、人間に寄生して生きてきたのだから知っているだろう。
睡魔にとって、人のねむけがご馳走なのだろうか。だとしたら、体が疲れるように仕組まれたのも、睡魔が食事にありつく為なのだろうか。
と、ここまで考えて、理性的な思考の方のワタシから、そもそも眠気は身体のコールサインだし睡魔という生き物はいない、とツッコミが入る。
そりゃそうだけどもね?
ほら、理性くんも分かるでしょ。
こちらが正義であるならば、対抗意見は悪だと看做すものでしょう。奴を仮想敵にしてしまった方がわかり易いんだよ。
それとも何かい?理性くんと睡魔はマブ(親友)なのかい。と言うと、理性くんは気まずそうに顔を逸らす。
そりゃあそうだ、睡魔がわたしを襲い眠ってくれないと、朝起きた時に君が働けないんだものね。
きみもわたしの一部だというのに、こちらに従わないなんて随分偉くなったものだ。
それはおかしい、と理性は机に勢いよく手をついて立ち上がる。
アナタこそ、ワタシの一部だろう。
ワタシがいなくては仕事もできないというのに、何を偉そうにしているんだ。
何度助けたと思う、睡魔に従わず夜更かしをして朝寝坊をしてしまった時、通勤途中に自転車で転んでしまった時、急に仕事の量ややり方が変化した時。
何度も何度もアナタのことを助けたというのにそんな物言いは無いんじゃないか。
ワタシだってストライキしてもいいんだぞ、アナタは底意地が悪いからきっと直ぐに仕事をクビになってしまうね。
そんな様子をみて、睡魔はケタケタと笑って見せた。
まぁまぁ御両人、アンタら眠いからピリピリしてんだよ。
晩御飯は食べた?風呂は入った?歯磨きしたら、お布団の中に入っておしまい。
すーやすや、明日になったらそんな諍いも忘れるくらいご機嫌さぁ。
はい、おやすみなさ〜い。ってね。