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経営者になった研究者、備忘する - 6ヶ月目 | 経営者に休みはなく、事象としても概念としても
これは、経営者になった研究者の備忘録である。
私が経営をしながらその時考えていたこと、実践していたこと、喜怒哀楽などをつらつらと綴っていく。
ちなみに今日は宇多田ヒカルさんの"first love"を聴きながらちょっぴりエモい気持ちで綴っている(文面がエモくなってたらきっとそのせい笑)。
今回は「経営者のプライベート」について。
0→1で事業を立ち上げて数ヶ月の創業期にある経営者がどんな生活をおくっていくのかを書いていく。やたら忙しそうにしている様子が垣間見れるが、「わたし忙しいのよエッヘン」とか言いたいわけではなく、事実をそのまま淡々と書いているのでお許し頂きたい。
ちなみに「経営者になった研究者シリーズ」は備忘録なので誰かの役に立とうという意思もなく、取り留めもないので、決して「研究者が経営者として成功するノウハウを教えるぜ」みたいな意図で書いてはいない。
というわけで、この備忘録を読んで「参考にしたら痛い目をみました」と言われても何の責任も持たないので留意されたし。
なお、毎回の備忘録にはマイルストーンとして創業からの年月と月利益を記す。なぜ年間の利益でないのかと言えば、そもそも創業1年たっていないので年間の利益は存在せず、また例に漏れず創業期の企業として月単位でもどんどん利益が変動するので、「これがうちの固定の年間利益です」と表現することに違和感を覚えるからだ。
「飛び抜けてよかった月の利益だけを表に出してるのでは?」と思うかもしれないが、備忘録でそんな飾ったことをしても私には何の実利もないので「まぁだいたいここ数ヶ月で平均するとこんなもんか」と腑に落ちる額をその時々の月の利益として提示している。
また、創業からの年月としては、正確にはmMEDICI株式会社の創業は2024年4月なのだが、私がCEOとなり稼動し始めたのが2024年8月のため、そちらを始点としてカウントする。
弊社の現在地
創業:6ヶ月目
月利益:800万円~1,000万円
ウェビナー事業:200~300万円
オンラインスクール事業:450-500万円
研究支援事業:20~50万円
社員数:正社員1名(役員除き)・業務委託19名
消失する休み、24時間闘うのである
「経営者に休みはない」とはよく言ったもの。例に漏れず、創業直後より休みはなくなった。
やるべきことは無限、しかし時間は有限である。
決して「どうだ私はこんなに忙しいんだぞ、マッチョだぞ」という自慢をしたいわけではなく、休みがなくなったので事実としてそう記す。
どれくらい休みがなくなるかというと、そもそも「オンとオフ」というカテゴリーが消滅する。生きることそれすなわち経営、という状況になるので「オフ」という概念が霧消するのである。
その結果、24時間睡眠時以外は働くことになる。
とはいえスタート時点からそうだったわけではなく、ウェビナー事業1本の時には平均すれば1日3時間程度の稼働で十分であった。土日もふつーにあった。
休みが消失したには、二の矢としてオンラインスクール事業を立ち上げたときからであり、従業員と、お客様と、業務量がここから激増することになる。
試しに1日の流れを書いてみよう。こんなに綺麗に区分けされてるわけではなく、常時タスクが入り乱れるのだが、「ごっちゃごちゃですー」と言っても何も伝わらないので、あえてフィクションとしてタイムラインで整理してみる。実際にはタスクのるつぼ状態なので、このタイムラインを脳内でぐちゃあ〜と煮詰めて解釈してほしい。
9-11時:各所からの依頼に対応
CEOには常にありとあらゆる方向から依頼が飛んでくる。私も実際に体験して「東大SPH時代にお世話になった先生、こんなんこなしてたのが、バグってんな」という気持ちになった(1日数百件のメールに対応するとか言ってた気がする)。
従業員に依頼された様々な資料のレビュー、To Cのお客様のお問い合わせへの返事、To Bの担当者様のメールへのお返事、ご講演依頼をしている先生方へのご連絡など。
朝イチで昨夜頂いたこれらの依頼に対応していると時間がするすると溶けていく。ちなみにこの依頼は1日中飛んで来続けるので、打っては返し打っては返し、時に「はぁはぁ」と息切れしていることに気づく。しかし、CEOである私がボールを握ってしまうと事業全体が止まるので、こういう対人コミュの仕事は何よりも優先して片付ける。
会食中やサウナ中もばんばんSlackやメールでメッセが飛んでくるので、その時は「メモ」に残しておき、終わるとばーっとお返事していく。1時間スマホをみないと10件とかざらに溜まっているが、創業期のまだまだ小さな私の会社レベルでこのくらいなので、楽天やソフトバンクのCEOともなると一体どうなっているのかと恐ろしさすら感じる。
「経営者の仕事は決断」とよく言われるが、日々小さいものから大きいものまでいくつもの「決断案件」が降りかかってくるので、「2〜3日寝かせて考えよう」とかは存在しない。この時間感覚における「2日後」というのは3ヶ月後くらいにすら感じるものであって、見た瞬間に決断して捌いていかないと事業が停滞する。
11-19時:いろんな会議にいっぱい出る
いろんな会議がいっぱい入る。
弊社のマネージャーとの1on1だったり(週1回でやってる)、事業ごとのmtgだったり(これも週1回)、講師の先生との打ち合わせだったり(これは月3回くらい)、営業させて頂く企業様だったり(これは沢山)、逆に営業してくださる企業様だったり(これは週1)、研究支援事業のプロジェクトの会議だったり(これは週2くらい)、その他にもなんかよくわからん会議が色々はいる。
「CEOってこんなもんか〜」と思ったが、なるほどCEOとは意思決定の要衝であり、コミュニケーションの要衝である。というわけで会議はメインのタスクなので、「会議の会議の合間に手を動かす仕事をする」という感じ。お昼や夕ご飯も、コンビニで買って会議をしながら食べるか、会議の合間にラーメンを食べるか。
そんな会議もだらだらやっていては時間が無駄になるので、社内の会議に関しては徹底してKPI管理をするようにしている。まず最初にKPIの達成状況を教えてもらい、その分析、そして打ち手という順に話して、それで終わり。時間が余ればお洋服とかグルメについて雑談したり。
11-19時:未来の種まきにクリエイティブな作業もする
会議の合間に、クリエイティブな仕事を挟んでいく。
例えばmJOHNSNOWの講義資料を作ったり、依頼を受けている研究を進めたり、執筆中の書籍を進めたり(全然進まないんだなこれが)、事業計画を考えたり、ウェビナーの企画をつくったり。
こういうのはまとまった時間がないと進まないので、会議の合間が1.5時間でもあれば「おっしゃ!!!」と思ってガーッと取り掛かる。
クリエイティブ作業は、気を抜くとついつい放置しがちだが、これは経営における種まきであって、無理をしてでもここを進めていかないと事業が成長しない。なのでつい目の前のタスクにリソースを振りたくなっても、グッとこらえて数ヶ月から数年先を見据えてクリエィティブ作業をこなしていく。
「この作業のおかげで、数ヶ月後に自分偉いって思えたら良いな」という淡い期待を抱く。
19-21時:従業員や経営者仲間と会食
CEOはコミュニケーションの要衝なので、会食もする。
ランチの時もあるけど私は夜の方が落ち着くので好き。お鮨か焼肉が多いが、これは美食家を気取っているわけではなく(そのような高尚な舌は持ち合わせていない)、シンプルに「小分けにして食事できるので、会話の邪魔にならないから」という業務上の理由である。
ちなみに回数はそんなに多くなく、週に1回あるかどうか。なお、会食の後は講義があることが殆どなので私はお酒はのまないし(というか飲めない、アルコールダメ)、21時前には解散になることが多い。
経営をしていて一番心休まるのが従業員や経営者仲間との会食である。
私にとって従業員は宝であり、(語弊を恐れずに言うと)可愛くて可愛くてしょうがないという感覚(失礼だったらごめん)。彼らの可能性は無限に開かれているにも関わらず、こんなよくわからない人間がやっているよくわからない会社のために大切な時間を割いて貢献してくれている。もう感謝しかない。美味しいご飯を食べさせるとか、そんなことでも私にできることはなんでもしてあげたい。
そして、経営者仲間はやっぱり「同じ苦しみの中で頑張っている」という同志として心温まる交流ができる。そこまで突っ込んだ話をするわけじゃないけれど「お前も大変なんだろうな、お互い頑張ろうな」と勝手に思って胸が熱くなる。
ちなみに私は会食の類は極力しないようにしている。営業のための会食とか全然しないし、経営者仲間との会食も本当に一部の、それこそ大学時代から仲が良かった仲間と、経営者になってから知り合った気の合う友人とだけ、という感じ。
世の経営者には派手に遊び散らかしている方々もいるが、幸か不幸か私にはそこまでの器がないのであった。
というか会食が一つ入るとその間に溜まった大量の案件をその直後に捌かないといけないので、「怖くて会食とかそうそうできない」というのがちょっぴり本音だったりする笑。
21-22.5時:講義をする
月のうち半分くらいはmJOHNSNOWかmERASMUSの講義が入っている。自分が講師をするのは3回くらいで、「最高の体験をお届けしたい」と気張っているし、他の講師の講義の際もスタッフとして裏方をしながら「みんな楽しんでくれてるかな」とドキドキしている。
私のモットーとして、「お客様にかけて頂いているお金の4段階上の体験をお返しする」というものがあり、弊社のサービスを利用した以上は「報われた」という気持ちになって欲しいのである。
そうでなければ弊社が存在する意義はないし、お客様からすればお金を無駄にしたことになってしまう。そのためにやれることは思いつく限りは全てやっているつもりだけど、だからといって安心はできず、講義中も「いまお客様はどんな顔で聴いているのか、何か役に立てるのか」とドキドキである。
ありがたいことに弊社のウェビナーは満足度が平均96%くらいで極めて高い評価を毎回頂いているけれど、それでもやっぱりZoomのアンケート結果を開くまでは「70%とかだったらどうしよう」とドキドキなのである。多分これは一生そう、慣れないし、慣れちゃダメなはず。
22.5-1時:各所からの依頼に対応
講義中も各所からの依頼がバンバン飛んでくる。企業様はもう休まれているのでさすがに連絡は減るけれど、今後は逆にTo C、つまりmJOHNSNOWのフェローだったり人材紹介事業mNIGHTINGALEの利用希望者さんからの連絡が増えてくる。みんな仕事が終わってから活動し始めるからね。
というわけで、会食や講義中に頂いた依頼をばんばん捌いていくのである。
1時:読書や映画鑑賞、そして寝る
創業数ヶ月目くらいまでは2時まで毎日仕事してるのが当たり前であった。しかし、従業員を増やして、仕組み化が可能な業務は仕組み化して、社内のマネジメント体制を整えたことで、私が自由になる時間が増えてきた(とはいえ上記の状態ではあるのだが)。
なので最近は23時くらいには「そろそろ切り上げるか」とオフィスを立ち去るようにしている(オフィスといってもネカフェの一室みたいな極小オフィスである)。
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切り上げて何をしているかというと、小説や映画などの文化の摂取に時間を費やしている。
ドラマは最近のお気に入りはグランメゾン東京、あれにハマってミシュランのお店巡りが趣味になった。
経営をしているとついつい仕事のことばかりになってしまうが、長い目でみると経営には文化的豊穣さが必要であって、そういう経営とは関係のない営みが結局は経営におけるアウトプットに厚みを生み出すのではないかと期待している(そうじゃないかもしれないけれど)。
そうして30分から1時間ほど文化に触れて就寝。
ちなみに、こうして布団に横になっている間にもSlackでは嬉しいことにばんばん従業員やオンラインスクールのフェローからメッセージが飛んでくるので、目を通してメモに残して、「明日かえそー」ということでまた次の日の朝がくる。
創業当初は集客と金銭的な不安が大きく、夜中にトイレに起きた時にウェビナーの集客をチェックしたり、会社の口座の残金を何度も確かめたりしていた。
ちなみに私は7時間は絶対に寝たいし、寝ている。むしろ8時間くらい寝ている。寝ないと無理なのである。
東大受験で手にした最大の学びは「無理して努力しても無駄」という教訓である。あの頃は1時に寝て5時半に起きて、それ以外(文字通り)全て勉強という生活であり、それだけ努力しちゃえる自分も大好きだった。
しかし、心も身体も悲鳴をあげており、手の甲をシャーペンで刺しながら無理して目を覚ましていたが、そんなんで頭が回るわけがない。時間の無駄。
なので今ではたっぷり寝るようにしている。
休日は?ないんだよ
こういう毎日を過ごしていると脳がバグってきて、休日になると「今日は仕事が休みだから、ゆっくり仕事ができるぞ」という意味がわからないことを平然と思考するようになる。
毎週土曜日はオンラインスクールのmJOHNSNOW Hourという企画が走っており、ようは「朝9時から12時まで集中勉強時間、なんでも私に質問してね」という時間である。
というわけで私ももぞもぞと起きて、自宅から徒歩5分のネカフェオフィスにいく(9時に間に合わないので8:55くらいに歩きながらオンライン自習室にログインしているのはここだけの話)。
そんでそれが終わると、休日は会議もないのでクリエイティブな作業に時間をかける。例えばこうやってnoteを執筆したり、情報発信の方にリソースを振る。
色々と書き物はあって、私個人のブログや、このnote、mJOHNSNOWで毎週発行している定期レポートのmJOHNSNOW Reportや、弊社のお客様に届けるメルマガ、そして出版を控えている書籍など(なぜかこれが一番進まない、ごめんんさい。。。)。
情報発信の効果が出るのは半年から1年後くらいな気がするので、ついつい気を抜いてしまうかもしれないが、これは経営者としては絶対にやるべきと感じる。
弊社が初回のウェビナーから1,000人を集客できて、オンラインスクールだって3ヶ月で800人もの方が登録してくれたのは、なんだかんだいって私がXとブログで3年間近く淡々と疫学やらキャリアやらについて情報発信してきたからというものがある。
なので私は情報を発信することのインパクトの大きさは身をもって体感しており、そして何よりこうして自分の思考を文章に残すことが好きなので、時間があればいそいそと文章を綴るようにしている。いそいそ。
しかし土曜日にも仕事はあり、月のうち2回はウェビナーが入るし、最近はmJOHNSNOWのピアグループの勉強会も月1回くらい入ったりする。
そういえば、どこかの経営者が「週末に紙とペンをもって考えることだけが経営」と言っていたという話を聞き、まさにこれこれという感覚。
私の場合は、このザ・経営みたいなことを考えたい時にはオフィスのすぐ近くにあるサウナにいくようにしていて、そこでゆっくりお風呂に浸かりながら「どうしようかな、ほげぇ〜」と事業計画を考えたりしている。
月2回くらいなのだが、「今日はウェビナーが終わった後にお風呂行っちゃうぞ」とか考えるとうずうずしてくる。
このお風呂時間がとても好き、この時間が好きな自分も好きだったりする。私の毎日のなかで一番好きな時間かもしれない。
あと、休日にやるのは経理かな。弊社は経理・人事はいないので全部私がやる(この規模の会社なら当たり前だけど)。取引先への請求書・見積書の作成だったり、従業員の給料の振り込みだったり、税理士さんに渡す書類の作成だったり。
「そんなん人雇って投げるべきだよ」という考えもあるけれど、私としては「経営者として数字にタッチし続ける」というのはなんかとても大切なことのように感じるので(ここを放棄すると経営が形骸化しそうで怖い)、まぁ面倒な作業なのだがちまちまと自分でやる。
でも、従業員に給料を振り込む時とかは「こんなに頑張ってくれたんだ、ありがとう」という気持ちになり、嬉しい。
休んでるんだけど考えてるんだ
常に「何か見落としてることはないか」、「もっとやれることはないか」と考えている。
マジで”常に”考えている。
なんでかっていうと、第一にはシンプルに「タスクが多すぎて見落としまくってても全然おかしくないから」である。幸い私はここら辺の記憶は強いらしく(研究者やってたからかな)、あんまり落とさない(落としてたらごめん)。
第二には、「お客様に恩返しするためにもっとやりたいから」である。mMEDICIの事業は、ウェビナーもオンラインスクールも、人材紹介も、「知に繁栄を、辺野に豊穣を」のミッションのもと運営されており、「サービスを使ってくれた人が、この日のおかげで人生が変わった」と言ってくれる次元までそのクオリティを高めないといけない。
「ああ、良いこと学んだな」では意味がないのである。いや、もちろん学問にはそうした意義があることは認めるが、mMEDICIの学びは「格差の辺野にある人々が、強く生きるための武器」でなければならない。
武器とはつまり、「それがあったから人生をより充足させられた」という手段であり、もっと具体的には「論文を1本でも多く書けるようになった」、「生涯年収が増えた」という手段である。
それは、生半可なクオリティの学びでは到達できるものではない。しかし、私自身は東大SPHでそんな学びを施して頂き、私の中には明確に「この次元の学びを届けなければ、mMEDICIの存在意義がない」という理想が存在する。
だから、どの場面を切り取っても「こんなんじゃまだまだダメだ」という焦燥感がある。ウェビナーであれば、宮崎駿映画を観終えた時のような心臓を突き上げるような高揚感を届け、その熱が100年先の人生までもドライブし続けるようなものでなければならない。
なので、ウェビナーmERASMUSやオンラインスクールmJOHNSNOWでの学びが「どうすればもっと良くなるか、みんなが報われたと感じてくれるか、みんなの生活が劇的に変わるか」と考え続け、許される限りの打ち手を打っていきたい。
そんなことを考えているが、これはこのために特別時間をとって思考しているというよりも、潜在意識でずーーーーーっと醸造されている感じ。
さて、これで今日のnoteは終わり。
今日は19時から人材紹介の転職希望者さんのキャリア相談があり、21時からはウェビナーの司会がある。
それまでは楽しみにしていた「阿修羅のごとく」を観るのである!というわけで連絡には返事ができないのであしからず。
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