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【ドイツ風物詩】堂々とネクタイをチョッキンする日

[初出:2007年2月]

散歩の途中、森の外れから歓声が聞こえてくる。そうか、今日はアルトヴァイバー・ファストナハトだったなと思い当たる。カーニバル本番の幕開けにあたる木曜日は、女性無礼講。旧市街地などでは、仮装した女性たちがハサミ片手に男性のネクタイを切ってまわる。しかし、閑静な森の中で何をしているのか。お目当ては、連邦軍の官舎。カーニバル女性軍はそこを襲撃して、乗っ取ってしまうのである。もちろんすべてはお芝居である。

もともと、当地のカーニバルは社会や権力者の風刺を本領とする。よく見かける軍隊風の衣装はナポレオン軍を嘲笑したものだ。

国の軍隊というお堅い組織までお祭りに付き合うのは、さすがライン地方である。鉄条網の向こうから鳴り響くカーニバルの囃子唄。新しいテロの時代と騒がれる今の世にあって、微笑ましいくらい呑気である。

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