【ドイツあれこれ】高級リゾート物件のその昔
[初出:2006年11月]
リューゲン島の東部に、「プローラの巨体」と呼ばれる文化財建物がある。ナチスが労働者懐柔策の一環として建設した大規模な宿泊施設であるが、近頃、その一部が売却されるというニュースを読んだ。
収容人数2万人というだけあって馬鹿でかい。実際に目にして呆れた。全長4.5キロにわたり、画一化されたビルが延々と続く。比較的保存状態のいい中央のブロックには、博物館、画廊、古本屋などが入っていて、観光客で賑わう。
そのなかにあるプローラ資料館をのぞいたみた。展示の設計図から、ヒットラーのメガロマニアぶりがうかがえる。まさに狂気の沙汰である。そして、その狂気のために数多くの強制労働者が汗を流したことを知り、ため息が出た。
建設開始からちょうど70年を経た今、草葉の陰で彼らはこの転売のニュースをどう思っているのだろう。