【ドイツあれこれ】名を同じくして明暗を分かつ
[初出:2006年2月]
近頃では、ドイツのどこに行っても必ずマルチプレックスシネマと呼ばれる大型映画施設が見つかるようになった。その一方で、繁華街から普通の映画館が姿を消していく。デュッセルドルフでも、多くの人々に惜しまれながら目抜き通りケーニヒスアレーの映画館「リヒトブルク」が幕を閉じて、一年余りになる。
94年の歴史も時代の波には勝てなかった。60年代初頭には50もの映画館が街にあったという。同じ名前でも、エッセンの「リヒトブルク」は市や州の助成金で1,250の座席数を誇るドイツ最大の映画館として優雅な姿で保存されている。往時の姿に復元された布張りの椅子で観る映画は格別だ。
90年代の建設ラッシュが過ぎた今、マルチプレックスは経営困難に陥っているところも多い。ふらりと立ち寄れる街角の映画館のなくなった風景はさびしい。