【ドイツあれこれ】思いがけずに翻訳の自己消費
[初出:2007年8月]
旅先の観光名所で買った日本語のガイドブック。何気なくページをめくるうちに、はっと気がついた。これは一昔前に自分で訳したものだ。まるで、失われた我が子に再開したような気分だ。建築や美術の専門用語が多くて、訳すのに苦労した覚えがある。今読み返すと、正確に訳されてはいるが、ドイツの公式ガイドの常としてやや冗長な感じを受ける。郷土歴史家の書く文章はアカデミックに過ぎる。
メジャーな観光地なので、ひっきりなしに日本人団体客を見かけた。添乗員に案内される彼らに、こんな細かい説明を読んでいる閑はなさそうだ。もっとも、皆、日本からガイドブックを持参している。お店やレストランの情報を満載したビジュアルな雑誌の類である。
こんなの誰が買うのだろうかと思いながら、手にした小冊子を大切に鞄に入れて持ち帰った。