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労働者の街、トロロープ夫人|第14章 シンシナティ|アメリカでの40年間(1821-1861)

Forty Years of American Life 1821-1861
Thomas Low Nichols


シンシナティ(google mapより)

労働者の街

バッファローの街が「湖の女王」と呼ばれていたように、「西の女王」と呼ばれているシンシナティの街を私が初めて訪れたのは1845年で、当時は5万人ほどの住民が住む活気ある町でした。私にとっては、そこは労働者の街のように思えました。資本家たちは裕福になったものの、日曜日に一張羅を着たり、礼儀作法を学んだりする暇のない、熟練の機械工たちでした。


トロロープ夫人

偉大なる西部のこの新興大都市に住み、礼儀作法と文明の伝道師を自称するトロロープ夫人が非難されたことに私は驚きません。彼女は絶望してイギリスに帰国し、アメリカ人の家庭内マナーを執筆しまし。それは、落胆の年月であり、試練であり、時には損もしながらシンシナティだけのために無駄に試みたことと同じ内容を、アメリカ国民全体のために一気に実行したのです。私たちはトロロープ夫人に対してひどく怒っていましたが、それでも彼女の本を読み、また怒る以上に、その本から少なからず教訓を得ました。劇場のボックス席で誰かが無意識に観客席に背を向けたり、クッション付きの前部にブーツを置いたりしたとき、私は何度も「トロロープ!トロロープ!」という、注意したり叱ったりする声を聞いたものです。そのことで、違反者は自分の罪の重大さを痛感させられました。アメリカ人は、この面白い監視役に本来感謝すべきです。ですが、それほど感謝しないのではないかと私は心配になります。


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