
極端な暑さと寒さ|第2章 40年前のニューイングランド地方|アメリカでの40年間(1821-1861)
Forty Years of American Life 1821-1861
Thomas Low Nichols
極端な暑さと寒さ
アメリカはまず間違いなく冬は長くて寒く、夏は非常に暑いです。緯度が高いとはいえ、イギリス諸島の温暖で平穏な気候に住む人々は、アメリカ北部の暑さと寒さがどれほど極端かを知らないでしょう。夏には日射病で人が亡くなり、冬には凍死してしまうこともあるのです。ニューヨークでは御者が荷台の上で凍死することもあり、猛暑で人が倒れて死なない夏はほとんどありません。フッカー将軍は、リー将軍の進撃で脅威にさらされたワシントンの防衛に駆けつけたとき、一度の強行軍で日射病により1000人の兵士を失ったと伝えられています。
アメリカの気候は、マドラスとノヴァ・ゼンブラの気候が一緒になったような、熱帯の夏と極地の冬が組み合わさったものです。イギリスやアイルランドでは草はいつまでも青々としていますが、アメリカでは冬は凍りつき、夏はカラカラに乾いて枯れてしまうこともあるのです。干ばつの年になると、小川も井戸も枯れ、牧草地は褐色になり、草原はいちめん灰の原っぱのようになります。牛が水場を求めて何キロもさまよい、森の中を歩き回り、あげく餓死してしまうこともあります。数年前、カンザス州の人々が危うく滅びるところだったのは、このような干ばつによるもので、被害にあっていない地域からトウモロコシなどの食糧が送られてこなければ、飢え死にするところでした。
私の生まれ故郷はフランスのリヨンとほぼ同じ緯度ですが、雪は3、4フィートの深さまで降り積もり、一度に3カ月も降り続きます。氷は20インチの厚さで凍りつき、温度計は氷点下20度、30度、山間部では40度まで下がったところもありました。そして、木々は大砲のような音とともに霜で破裂し、3フィートの深さまで凍った地面が雷のような音とともに割れ、その地割れが家の近くを通ると家を揺さぶったものです。このひび割れは畑を横切るように長い距離を一直線に伸びており、霜が伸びるのと同じくらい深く、幅は1インチ近くもありました。
気温に関しては、ある寒さに達した後では、10度や20度の差では感覚にほとんど違いはありません。手足と耳と鼻を凍結から守れば、寒さに抵抗する体の組織を刺激するのか、氷点下を超える霧雨のような寒さよりも辛くなくなります。強烈な寒さであっても空気が安定していれば、決して最悪の天候というわけではありません。血液を活発に循環させ、全身がエネルギーに満ちてきます。寒さで凝縮された空気は酸素を豊富に含み、霜が降りると実に爽快なのです。