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常に知らせを待っている|第1章 イングランドのアメリカ難民|アメリカでの40年間(1821-1861)

Forty Years of American Life 1821-1861
Thomas Low Nichols

常に知らせを待っている

私たち難民や亡命者が大西洋を3,000マイルも越えて、人々が引き裂かれ血を流している故郷を振り返ってみると、平和だった頃の、とても誇らしくてとても幸せだった思い出ばかりがよみがえります。これはイギリス人には理解できないでしょう。

われわれがどれだけいつもいつもアメリカのニュースにやきもきし、何度も何度もこのニュースを読み返し、イギリスにフランスに、あらゆるところに平和への希望を求めたことでしょうか。 熱心にニュースを探し戦争の経過を見守っている人はほかにもいるかもしれないけれど、実際の戦争の光景をよく知っている私たちとは違います。

ポトマックでの戦い?私たちはポトマックの流れを、アレガニー山脈の山頂にあるきらめく小川から、世界の海軍を収容できるほど広く深いチェサピーク湾に注ぐところまでたどってきました。

ヴィックスバーグ?私たちの汽船が最後に断崖の下に横付けになったときのことを覚えています。それ以来、私たちは険しい丘の斜面を駆け上がり、勇敢に防衛してきました。

ガルベストン?低い島の白い砂浜にある小さな庭園のようなかわいらしい都市で、まるで帯地方のように澄んだ輝く海に囲まれています。

戦死者や負傷者の名前を読み落とすことはありません。血まみれの戦場には、学友、仲間、親愛なる友人たちの無残な死体や、ずたずたになった死体が横たわっていたかもしれないのです。私たちは、ニューヨークとシンシナティで戦った一方の軍の将兵を、モービルとニューオーリンズで戦ったもう一方の軍の将兵を知っています。そして左に右に行ったり来たりしながらリストに目を通し、一人また一人と短い栄光の記録を発見するにつれ、連邦軍と南軍に涙がこぼれ、こう言わずにはいられません。「かわいそうなやつだ、かわいそうなやつだ!」

そして、狂ったような、または貪欲な、あるいは野心に駆られ、侵略、強奪、そしてわが国の未来に暗い影を投げかけるような、言いようのない恐怖の戦争に突き進む者たちを心の中で呪うのです。

ヨーロッパの大国よ、文明の大国よ!兄弟が互いを殺害しているとき、兄弟間の争いを止めることはすべての人の義務です。国家はいつまで傍観し、"兄弟の番人じゃあるまいし "と首を横に振らなければいけないのでしょうか。人間にはひとつの道徳と宗教だけがあるはずなのに、国家には別の正しい道があるのでしょうか?ヨーロッパの世論は、この戦争を無駄な争いだと非難しています。「人類の公正な判断」であるヨーロッパの世論が、なぜ尊重されないのでしょうか。

不安でたまらない亡命者であり、とても疲れている中で、私は次のページを書きました。私はアメリカについて、そしてその制度や人々の中で最も特徴的と思われるものについて、私が記憶しているままに記しました。 半世紀近くにわたる多忙で多彩な人生を振り返り、海を隔てた向こう側に見えるアメリカの制度や人々について記しました。

アメリカ人はいつだって自国のことを誇りと喜びをもって書いてきました。ところが私は悲しみと屈辱の中で書いたのです。でも、炎の中で清められたアメリカが将来、過去の約束にふさわしい存在となることを願わずにはいられません。




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