小説「対抗運動」第4章4 もみがらミネラル炭、生産―消費協同組合、市民通貨、万置き
おいさん「舞ちゃん、ミネラル炭の引き合いがきたよ。」
舞ちゃん「えっ!大山千枚田の人達から?」
おいさん「いや、庭師の親方からなんや。秋にお寺の土壌改良をするんやて。菅原さんいうてね、ルソーやマルクス読む庭師がおるんやけど、親方に宣伝してくれたんじゃ。豪い庭師でね、小説書いたり、在日のペルー人やコロンビア人とアソシエートしたりしよるんよ。おいさんはよう知らんかったんやけど、病気になった欅の治療にもみがら炭が効くらしい。最近は炭焼く人が少のうなってしもて、炭を手に入れるんが大変らしいんや。新庄のもみがらミネラル炭の試みに、大いに興味もってくれたんで、見本送っといたよ。」
舞ちゃん「採用されたらええね。菅原さんも対抗運動家?」
おいさん「そうじゃ。これから対抗運動家になっていく職人がどんどん増えるじゃろうよ。」
舞ちゃん「どして?」
おいさん「自由で平等な生産者たちのアソシエーションを創りやすいからじゃ。」
舞ちゃん「何、それ?」
おいさん「生産―消費協同組合のことじゃ。職人は会社で雇われいでも直接職人同士が契約して生産協同組合をつくれる。消費者協同組合が組織されさえすれば、そこと契約を結んで、生産―消費協同組合としてやっていける。ついこの間、木工の小関さんらが結成した職人協同組合から通知が来とったね。消費者協同組合の中で、庭師を必要としとる人らが、連絡取りおうて何十人か集まれば、腕のええ庭師を育てていける。集まるいうても、要はインターネット使うて、要望をまとめていくだけじゃけどね。コーディネーターは必要じゃろね。木工じゃろうと、大工じゃろうと一緒じゃね。TCXの松本さんは、このやり方は職人の協同組合に対してだけじゃなしに、一般の企業に対してでも使える、リクエストメイド・システムじゃと言いよるけどね。ちょっと水田トラスト運動や大豆トラスト運動とも似とるね。安全でおいしい農作物作りたい百姓と、それを食べたい消費者と望むところは共通やのに、間に経済のカラクリが入ってくることによって、百姓はできるだけ手間のかからんものを作るようになるし、消費者はできるだけ安いもんを求めるだけになる。けど、トラストいう形を採用する事によって、安全でおいしい農作物を作り、食べる事が可能になる。」
舞ちゃん「うーん、なんや暇かかりそうやね。」
おいさん「うーん、ひとつのユニットつくるんは、そうでもないと思うよ。大変やけど勢いでやれる。えへへ。
暇かかるんは、そういうユニットをつなげもって拡げていくことじゃね。ひとつじゃったら無駄が多なるけん、やっぱり高くつくね。おいさんは皆が早よ市民通貨Cを採用してくれたら、うまく分業できて、生産―消費協同組合が拡大していくのに、と思うよ。」
舞ちゃん「おいさん、今は、万置き、の方が面白いんやない?」
おいさん「えっ?万置き?なんで?」
舞ちゃん「生産と消費の間に経済のカラクリを入れんようにするには、万置きが一番ええよ。どうしても拡めたいもんを、ここじゃ、というとこに置いてくる。気に入ってもらえたら実費をもらいもって続ける。」
おいさん「うーん。ちろりん村の大西さんも似たようなこと言いよったね。もみがらミネラル炭拡めたいんじゃったら、山積みにしたダンプ10台位連ねて四国へ来い。よどんだ沼にぶちまけて勝手に水をきれいにしよう。うまく行ったら知事さんに感謝されるかも知れんけど、無視されるかも知れん。悪くすると、ゴミの不法投棄じゃいうて捕まるかも知れんぞ。しかし、認められたら、四万十川の浄化に採用されるかも知れんよ、と。」
舞ちゃん「えへへ。大赤字になってしまうね。もみがらミネラル炭はやっぱり無理やね。トランス・コミックみたいに安く作れるもんやないとアカンね。おいさんは頑張って生産―消費協同組合つくりい!それから市民通貨も、ね。けど、うちは万置き、気に入ったんよ。自分がええ思うもんを、自分が気に入ったところに置いてくる。それが拡まったら・・・。考えただけでもドキドキする。」
続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年5月10日