小説「対抗運動」第5章5 がんばれ、フェアトレードショップ、有機農家
舞ちゃん「おいさん、市民通貨Cを発行するんは、加盟しとる商店やね。LETSが対抗運動の道具になるんは、参加者全員がLETSを発行できるからやないん?」
おいさん「舞ちゃん、今の世の中では、誰でもが対抗運動家になれるわけではないんや。・・・LETSなら参加者が誰でも発行できる。その内部では、フェアーな取引が行われとる。けど、LETSは広がっていって、今の世の中の経済を変えるような対抗運動の道具にはならんよ。じゃがね、消費者としての労働者は対抗運動家になれるんや。Cを発行出来るためには、法人になる必要がある。職人やったら、個人でなれるし、ショップでも個人経営のとこやったらなれるね。けど、消費者としてだけ関わろうとするなら、発行はできん。」
舞ちゃん「サラリーマンは、自分が働いとる会社で発行してもらわな、自分では発行出来んのやね。」
おいさん「けど、対抗運動の面白いとこは、他の会社で発行してくれても、それを活用すればええんや。反戦ボイコットもそうやったね。ボイコットフラグに、たとえ自分の勤めとる会社が載っておっても、他のボイコット対象企業をボイコットすればええ。自分の勤め先をボイコットすることはできんでもね。そのことが、自分の勤め先の会社が戦争支持を止めるよう運動することでもある。」
舞ちゃん「ボイコットはそうやけど、市民通貨Cの運動もそうなん?」
おいさん「自分の勤め先が発行せんでも、発行するとこの品物を買うことは、自分の勤め先が発行するよう運動することじゃよ。Cを発行して売上が増えるんなら、自分の勤め先も発行しようと考えだすじゃろ?」
舞ちゃん「うん、そこは解った。けど、Cが広まっていくことがなんで対抗運動になるん?」
おいさん「一つには、フェアトレードショップや有機農家の推し進めとる運動を、つなげることによって支援できるからやね。けど、もっと重要なんは、どんどん貧富の差を拡大しもって、戦争やテロの原因をつくっていく今の経済を、Cで変えていけるんやないかと思うんじゃ。おかしい、思ても、手も足も出んけんね。環境破壊も切羽つまったとこまで来とるけど、今の経済は、もっと利益あげるためには、まだまだ破壊してもええ、という経済じゃ。」
舞ちゃん「Cで変えていけるやろか?」
おいさん「舞ちゃん、何でもちょっとずつや。今の経済はおかしい、そう思う人らが、今の経済に対抗する手段のひとつがCなんじゃ。フェアトレードも有機農業も利益第一主義やない。けど、利益第一主義の今の経済の仕組みの中でやっていかざるを得ない。そのためには工夫がいるんよ。買うてあげることが一番やけど、ばらばらにやっとると効果が上がらん。けど、利益第一主義やない企業がCを発行しとるんなら、変えていこうと思うとる人らが、手や足を出せる。まずはそこからじゃね。」
舞ちゃん「うーん、けどおいさん、やっぱり今の段階では、対抗運動になるためには、どこがCを発行しとるのかが肝心やと思うよ。反戦ボイコットやったら、どこをボイコットしたらええか皆わかるけど、買う時はどうやろか?」
おいさん「フェアトレードを推進しとるとこ。反戦を表明した企業、これは協同組合が多かったね。あと、情報公開に熱心なとこやろね。特に、知識を皆の共有財産やと考えて、どんどんオープンにしとるとこがええね。利益を消費者に還元しとるとこもマルやね。環境問題も切羽つまっとるけん・・・・」
舞ちゃん「おいさん、やっぱり分かりにくいよ。皆、環境にやさしい企業じゃと主張しとるし・・・.」
おいさん「ほうじゃね、そしたら分かっとるとこから、やっていこか。そうしもって、同時にそれらの企業は、消費者としての労働者の運動を推し進めとることを宣伝せんといかんね。」
舞ちゃん「なんで?」
おいさん「舞ちゃん、ブッシュ大統領は今日、バイオ業界団体の催しで、非科学的な恐怖から、遺伝子組換え作物の輸入を妨害しとると、ヨーロッパの各国を非難したよ・・・」
舞ちゃん「えーっ!」
おいさん「利益第一主義一辺倒は、とんでもないことをやりよるけんね。バイオ業界の目的はアフリカへの進出なんや。アフリカ諸国の指導者は、ヨーロッパ市場からの締め出しを恐れて遺伝子組換え作物の導入を拒んどる、いうんがブッシュの主張じゃが、これは、バイオ業界の利益のためには、アフリカやヨーロッパの人たちの安全を犠牲にしてもええ、いうことじゃね。消費者としての労働者の運動は、こんな主張や戦争の主張が馬鹿げたもんじゃいうことをちょっとずつ明らかにしていくよ。」
続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年6月27日