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新生⑦

わたしたちは海辺について、湾を見渡せるメキシコ料理店に入った。

「最初のデートって思うと緊張するね」

そうアマンダはいって顔をほのかに赤くした。わたしは、彼女に同意しながら、彼女が食べられそうなものをメニューの中からみつくろっていた。多くのアメリカ人はスパイスが苦手だ。普段食べてるのものに入っているスパイスといえば胡椒くらいだし、それだけでも刺激が強すぎるという人もいた。

とりあえずわたしは前菜にケサディーヤを注文することにした。これならメヒカンといってもテキサスで作られたものだし、彼女の口にも合うと思ったからだ。そして、今ならばマルゲリータやテキーラのショットを頼んでいただろうがソフトドリンクを二人分ウェイトレスに頼んだ。

わたしは、今でこそ水瓶座に支配された、毎晩酔っ払っているクズであるが、その当時は一滴も飲まなかった。アマンダはアマンダで厳しいカトリックの家庭で育ったものだから酒という物自体、それまでは関わることがなかった。それ故にソフトドリンクで乾杯するのは適切に思えたし、わたしたちにとってふさわしいと感じた。

やがて前菜のケサディーヤが運ばれ、わたしはアマンダに熱いうちに先に食べるよう勧めた。

「あ、おいしい」

そう言って笑顔を見せてくれたのに安心して、メインのエンチラーダを頼んだ。エンチラーダはメキシコなど中南米の伝統料理で、トルティーヤの肉詰めみたいな料理である。わたしは、アマンダの口に合うように、小麦のトルティーヤで作るよう頼み、またソースもスパイス控えめにしてくれとお願いした。アマンダは、スパイスも挑戦してみたいと言ったが、最初はこれで食べてみよう、と納得してもらった。そしてメインが運ばれ、彼女は美味しい美味しいと残さずすべてを食べた。わたしが選んだメインコースを平らげる姿は、とても愛おしくみえた。

レストランをあとにしたわたしたちは桟橋をゆっくり、月光にてらされ、海風に吹かれ、手をつないだまま歩いた。

「明日はどこいきたい?」

「うーん‥」

彼女は言葉を濁した。

「何処でも行きたい所があったらつれてってあげるよ、それにあさっての飛行機は午前中に出発だったよね?」

「もうちょっとこうしていたいな、それからホテルに戻ろ?」

そう言ってベンチに二人で腰掛けた。

しばらくしてアマンダに、もう帰ろうかと促したら、うんと答えたので戻ることにした。ホテルに変える最中のバスの中で、彼女はもじもじしだし、顔を真っ赤にした。

「‥じつはね、わたしの部屋、二人分でとったの‥」

「‥え?」

つづく



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