冬②
口にしてみて思い浮かんだ最初の感想は「なにこれ..」だった。餃子は一見普通に見えるのだがその皮に様々な爆弾が埋め込められていた。まず、様々な野菜が入っているのには感心したが、それに乱雑無償にぶった切りにされていて日の通りぐらいがバラバラであった。例えば、くそでかく刻まれた人参が入っていたが、歯がおれるかと思うほどの硬さであった。そしてよくみるとほかの餃子の皮にはアオカビの跡が見受けられた。どう、味は?とアマンダはニコニコしながらわたしに聞いてきたのだが、わたしはどう返していいのかわからなかったのか。これは悪意を持って作られたものなのか、それとも本当になにもしらなくて見よう見まねで作った結果なのか。
「..うん、ありがとう。でもこれさあ..カビだよね..」
えっと驚いて彼女はたちまち皿をわたしから奪い取った。どうやら本当に知らなかったのだ。
「まえ買ってきて冷蔵庫にいれておいたんだけど..」
いや、それをいつ買ってきたんだ。突っ込みたかったが抑えた。
気持ちだけでもうれしい、ありがとうと伝えたがどうも彼女は拗ねてしまい期限が直らなかった。まあそれもおかしな話ではあるが。気を取り直して食事にいこうと提案したら、承知したのでわたしたちはたまにいく近所の中華料理屋に向かった。道中わたしたちは終始無言で過ごしたが、別に彼女を慰める気もなかったのでレストランにつくまでお互いぶすっとしていた。大体わたしはアマンダに逆ギレされるいわれはない。あれを黙って食べるのが正解だったんだろうがわたしはそんな聖人ではない。わたしをせめるのでれば最初にカビ生えた手料理を食ってからにしろと言わざるを得ない。
昼食をたらふく食べたら彼女の機嫌が戻ってきた。そして
「あなたに誕生日プレゼントも買ってあげたいの」
とわたしをショッピングモールに連れて行った。わたしは特に何も欲しくなかったし強いていえばこの車生活が終わることが一番の願いでありプレゼントであっただったが仕方がなく彼女について行った。とある服屋にアマンダはわたしをつれていき、冬用の暖かい上着が必要でしょう、と厚手ジャケットを選んだ。デザインは米軍のM65ジャケットに準じたものだったし使い勝手が良さそうだったのでわたしは承知し、会計を済ませた。今思い返せばこれが唯一彼女が「用意」した誕生日プレゼントで、それなりにわたしも嬉しかった。正直なところどんなにひどい結果になったとしても、彼女が料理してくれたことにも些細な喜びと愛情を感じていた。帰路の車の中、わたしは彼女の手を握りしめ、アマンダも握り返した。そうしてすべてが収まってわたしの誕生日が過ぎ去ったのである。
つづく