新生④
新しい年になり、大学にまた通い出したわたしは、Eとの距離が遠ざかるのと同時にアマンダとの距離が縮まったのを感じた。それは、クリスマスにあった出来事を遠い記憶の中へと押しやる波の中でもがいていたわたしには当然の結末であったかもしれない。3月の半ばごろにいつものように他愛のない会話をアマンダとしていて、ふと21月の出来事とEについての話題になった。
「あの子は、秋頃にあなたの写真を見せて、どうかって聞いてきたことがあって」
「そんなことがあったんだ。で、なんだって?」
「わたしのタイプだっていったら、ちょっと考えてるようだった」
ちょうどその頃Eはわたしにアマンダを、話の相手をしてあげてねと紹介した頃でもあった。
「そうなんだ。というかEとはまだ話してるの?僕は最近縁を切っちゃったから何してるかもわからないけど」
「警察呼んだ男いたじゃん?あれと仲良くしてるみたいだよ」
正直な所、もはやEなんてどうでもよかったが、わたしは心の奥底で怒りに似た感情を覚えた。相変わらず自分勝手にやってやがる。あんなやつと距離を置いて正解だったな。そう考えているとアマンダがこう尋ねてきた。
「ところでさ‥わたしたちってもう付き合ってるって事なのかな‥」
「‥」
唐突にいわれてわたしはうろたえた。たしかに、わたしたちは毎日のように話をしていたし、彼女は私のことをタイプだとしばらく前から公言していた。
「‥遠距離でもいいの?」
「うん、でもわたしがそっちに会いに行くから」
「それでもいいなら‥ただ」
「うん?」
「記念日を覚えやすいように来週にしない?月が変わって一日になるし、そうすれば忘れることないよ」
彼女は笑ってそれを受け入れた。あとから考えると4月1日を記念日にするというのはいささか非常識かとは思ったが、アマンダの方はそんなことも気に留めにもせず
「それじゃあよろしく」
と言って通話を終えた。付き合ってもいいと言ってしまったが、本当にこれでよかったのか。Eとの関係は事実上終わっていたが、自然消滅のような形だったし、わたしもEもお互い別れることに関して話をしていなかった。その事実を置いておいて、軽々しくアマンダに付き合ってもいいと言ったことに関しての罪悪感を覚えた。脳裏にEの姿が、わたしを見つめているのが浮かんだ。このことについてEと話さなければならないことを実感しながら、ソファーに深く腰掛けた。どう話を切り出せばいいか。Eはどのような反応をするのだろうか。どうせわたしのことなんかどうでもいいと思っているのだから何も言わなくてもいいのではないか。幸いわたしには来週まで時間があった。4月1日までに何とかすればいい。そう考えることで、気持ちを楽にさせた。
つづく