冬③
わたしの誕生日が過ぎて2週間が経った。その日は大学が冬季休暇に入る前の日で、多くの学生が帰省するために大きなバッグを用意して、それぞれの実家へと帰っていく時期だった。空は今にも雪を降らせようといつもどんよりした様子で、木の葉もすべて枯れて幹だけの裸姿を晒していた。
さて、アマンダもまた実家に帰る予定であったがわたしはその間フィラデルフィアにいかなくてもよい事になった。つまり彼女は電車で帰省する事にし、車をここにおいておくことでわたしの寝床を確保したのである。彼女がどんな言い訳を両親にしたのかはわからない。冬の道を長距離運転するのは怖いとかそういうところだろう。とにかく冬季休業の間は助かった。
アマンダがフィラデルフィアへ帰える日にわたしは駅まで見送りにいった。
「くれぐれも気をつけてね。あと事故に遭わないように気をつけてね。それじゃあ良い年を。」
まあ言いたい事は分かるが‥いい年もヘチマもねえわ。わたしはちょっと彼女の言葉に怒りを感じつつしばしに別れる寂しさを同時に感じていた。彼女の、いつまでも列車の中で手を振る姿は、かつてアマンダがカリフォルニアへ来てくれた帰りの空港の姿を思い出させた。あの頃は良かったのだが‥
彼女を見送ってからどう帰ったのか覚えていない。きっと彼女の車を運転してそのまま帰ったのだろう。正直わたしは安堵の気持ちしか無かったからである。寝床が一ヶ月もあることに喜びを見出せない人とは関わりたくもない。
そのまま仕事に行って車に行った。正直ウォルマートもブラジルもすでに去ったあとだったのでいえにあがっていてもよかったが。こうしてわたしの冬休みが始まったのである。
つづく