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高卒就職 問題なのは一人一社制よりも情報の質・量・流れの形(2)

 高卒就職問題を研究しているtransactorlabです。

 高卒就職のルールや慣行の問題について、一人一社制の是非が注目されていますが、本当に問題なのはそこではなく、情報の圧倒的な不足なのだということを多くの方に知っていただきたく、提言を行っております。

 概要は本稿(1)に書いたとおりですが、情報不足が高卒就職事情にどのような影響を及ぼしているのかについて述べたいと思います。

 タイトル上の画像をご覧下さい。これは高卒の全国平均の求人倍率と初任給の推移を表したグラフの一部です。折線が求人倍率、オレンジ色の棒グラフは男子初任給、グレーが女子初任給を示しています。画像サイズの関係で下が切れていますが、一番右端が平成31年のデータです。

 求人倍率が平成23年を底に急激に上昇し、29年ごろからは3倍を超えるようになりました。コロナ禍の今年は、求人減だと言われてはいますが、やはり求職高校生の数に対して3倍近い数の求人が出ております。

 次の数字は今年度の東京の数字です。

東京都9月公開高卒求人 4,788件 求人数20,230人 そのうち12月時点で充足した求人 533件(11.1%) 2327人 全求人のうち月給が最低賃金基準以下の疑いがある求人件数 2,100件(43.9%)

 充足したかどうかの判断は、9月時点で公開されていた求人のうち、12月に公開停止(取り下げられた)ものをカウントしたものです。よって、例えば求人人数10人のうち9人が内定し、枠が1人分残っているため取り下げられていない求人票の場合でも未充足扱いしております。それにしても1割ちょっとしか充足していない。あとの9割は未充足のまま。求人事業者が新卒高校生をゲットできる確率は、求人倍率3倍という言葉が示す3分の1などといった甘いものではなく、10分の1なのです。

 最低賃金についての調査は個々の求人票に対して行いました。最低賃金額×8時間×その求人票に記載の月平均労働日数を基準額として、その求人票記載の月給額がこの基準額ギリギリのものがどれぐらいあるか調べたところ、なんと43.9%が該当しました。他の地域はだいたい10%~20%程度で、東京だけは異常に率が高く出ています。これは東京の最低賃金額が近年急騰しているためん、一概に「けしからん!」とは言えないことではありますが・・・。

 高卒就職に関する情報公開をもっと高めることを求める理由のひとつはここにあります。とにかく高卒就職については相場が分かる情報が本当に少ないのです。やたらと低い待遇の求人票が大量に出ているのはそのためだと私は考えています。

 ここでもう一度タイトル上の画像をご覧下さい。求人倍率の急上昇に対して初任給の上がり方が緩さが目立ちます。これは、高卒就職市場は売り手市場が続いているにもかかわらず待遇が上がりにくいという高卒就職の特徴を表しています。就職希望高校生にとって損な状況が続いていることになりますが、実は労働者全体、ひいては我が国全体に悪影響を及ぼす問題だと私は考えます。高卒就職者数は少ないですが、その給与体系は一般のベースになるものだからです。

 求人票を出したい事業者が自社の提示しようとする待遇条件が全体相場の中でどれぐらいの位置にあるのか、また、就活中の高校生が自分が今見ている一枚の求人票が全体の中でどの位置にあるのか、判断基準になる情報は「平均値」だけです。

 この「平均値」というもの。皆さんならばよくご存知だと思いますが、これだけで全体の実態を判断するのはまずいですよね。例えば、30人にクラスのテスト成績で、A組は15人が100点、15人が0点、B組は60点が15人、40点が15人、双方とも平均点は5同じ0点です。そもそも0点を取るような生徒はそのテストを受ける準備ができていなかったととらえられます。

 実は、これと同じような状況が高卒求人の中にも見受けられるのです。

 上記の東京の数字を見返してみてください。最低賃金以下の疑いのある表記の求人票のなんと多いことか。先ほど述べたように、これは求人事業者の方々だけの責任だと言いたいのではありません。情報不足のせいです。ちゃんとした情報が流れていれば、人を獲得するのが厳しい高卒市場からはいったん手を引いて、一般向けや臨時雇用の求人へと切替える事業者さんが出るはずです。

 お読みいただきありがとうございました。また続きを書きます。

  ありがとうございました。

 transactorlab@gmail.com



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