リンキングやリダクションをまったく練習しなくていい理由
リンキングは連結、リダクションは脱落とも呼ばれる英語の音声変化で、頻繁に発生します。そして、この現象は「結果」であり、練習する必要はありません。この記事では、リンキング、リダクションとは何なのかを端折らず説明し、それを踏まえた上で、リンキングやリダクションの「練習」がまったくいらないことを説明します。
破裂音+破裂音の例で説明
例として、破裂音+破裂音で片方(最初の破裂音)が後ろに吸収されるパターンについてみてみましょう。これに該当するパターンは以下の2つです。
単語と単語の間で連続するパターン:
a good car 良い車
eigit tips 8つのヒント
ひとつの単語の中で破裂音が連続しているパターン:
active, tiktok など
で、どっちも本質的には同じです。どれを取り上げても同じ説明になるので、ここでは tiktok で説明しましょう。
tiktok は発音記号(米音)で表記すると/tɪktɑk/です。さっきまでの話でいけば、kが消えるわけですから、消えてしまったらこれは/tɪtɑk/になります。
そして、この音を素直に発音してみるとわかるのですが、何かおかしいことに気づくはずです。あえてカタカナで書くなら、ティトックになります。(これはもちろん間違いです)
ではどういうことかというと、/k/の脱落は、単に消えるだけじゃなく、なにか仕掛けがあるといことです。/tɪtɑk/になるわけではありません。
何が起きているかというのを先に行ってしまうと、音は完全に消えるが、子音が消えるわけではない、ということです。専門用語で説明すると、この手のリンキングの正体は、/k/が無開放閉鎖音の [k ̚] に変化するというものです。無開放閉鎖音(unreleased stop)とは、/k/の形だけ作る、つまり/k/の閉鎖だけ作って準備してから、開放せずに次にいってしまう「子音」です。これは、立派な子音ですが音はなりません。
チャンクの末尾の破裂音が来るパターン、いわゆるリダクションも同じで、その音が消えるものの、「かおり」は残ります
英語は連結して当たり前
ここまでで、現象としてのリンキング、リダクションについて説明しましたが、これらはいずれも、結果です。つまり、原因が別にあり、その結果として現象が表に現れています。
そして、その原因は何かというと、「英語は音的に連結して話すのが当たり前」ということです。シラブルを複数連結させてできる「チャンク」は原則一息で話すので、(音声変化したくなくても)結果的につながって音声変化してしまいます。
たとえば、I did it がアイディディットになるのは、ditとitの間にストップ(閉鎖)がないからです。I did itをアイディドイットと読むためには、didとitの間に空白を挿入するか、(これは間違いですが)シュワなどの余計な母音を挿入する以外に手段がありません。
破裂音が連続すると片方がもう片方に吸収される理由も同じで、シームレスに英語を発話するためにはそっちのほうが都合がよいからです。
また、音声学の教科書には現象の説明(子音+子音だとこう、子音+母音だとこうとか)がことこまやかに書いてありますが、それは単なる分類で、それを暗記して練習するのはおかしいです。
関連記事:
英語ノンネイティブが発音にどのように取り組むべきかを説明しています。必ずしもネイティブ並みを目指す必要はない、という話です↓