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語順と意味
英語は配置の言語、つまり、語句と語句の相対的な位置関係が意味を作るうえで非常に重要視されます。English is a syntax-heavy language. といえるでしょう。そこで今回は、syntax-heavy な英語の特徴を、日本語の文と比較する形で説明します。
英語は語形変化に乏しい
たとえば、以下の文を見てみてください:
Higaneshi saw Sotchaso.
ヒガネ氏はそっちゃそを見た。
そっちゃそをヒガネ氏は見た。
Sothaso saw Higaneshi.
そっちゃそはヒガネ氏を見た。
ヒガネ氏をそっちゃそは見た。
上記の文からわかるように、英語の場合、語順を変えると意味が180度変わります。そして、日本語の場合は助詞(格助詞)があるため、語順を変えても、印象は変わりますが意味は変わりません。
日本語には、サ行変格活用などのナントカ活用がたくさんあり、語形変化や付属語という手段を用いることで、要素を柔軟に変化させることができます。対して英語の場合、語形変化はありますが、その豊富さは日本語などの言語と比較すると乏しいです。
語形変化には利点がある
語形変化が豊富な場合、覚える事項が必然的に増えることになるため、学習者目線で見た場合あまり歓迎されません。「あいまいみーまいん」の呪文でおなじみの代名詞の格変化の学習についても、しんどいと感じる人のほうが多数派でしょう。
ただ、語形変化が豊富な言語には明確な利点があり、それは、語句を眺めるだけで文中の役割がなんとなくわかる、というものです。
たとえば日本語の場合、語句に格助詞をそえることで、その語句が文中でどのような役割を担うかを、明示的に示すことができます。「美しい山が」という文節を眺めるだけで、「なんか主語っぽいな」と感じることができますし、「美しい山を」という文節を眺めるだけで、「目的語っぽい」という感覚を得ることができます。
一方、英語には格を示す標識があまりなく、文脈を与えられてはじめて語句の機能が定まることが多いです。たとえば、love という単語をみても、その単語がどのような文で使用されそうかは、あまり想像できません。I love you. であれば love は動詞として述語の位置で使用されていますが、love is over. であれば、名詞として主語の位置で使用されています。
さいごに
語形変化に乏しい言語や、語形変化がまったくない言語は、学習者の視点から見た場合、覚えることが少なくてラッキーと感じるかもしれませんが、その一方で、語句の配置から察する必要がある要素が増えることになります。
どっちが良い悪いという話ではありませんが、自分が学んでいる言語が syntax-heavy か morphology-heavy かは、なんとなく把握しておいたほうがいいでしょう。