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ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.315~316

(続き)

 インディアンたちが文化的生活に戻ってきたことによって、パーシーさんの任務は終了。本来なら、これで彼はホテルへ移るはずでした。ところが、そうしたがらないの。本人は、子どもたちにすっかり慣れちゃって、まわりにあの子たちがいないと寂しいって言ってる。まあ私が思うに、婚約破棄されてあまりにもみじめな気分になっているから、一人になるのが嫌だ、っていうのが本当のところじゃないかしら。銀行で働いているとき以外の時間を埋めるものがほしいみたい。それに、我々のほうでも、彼がここに残ってくれると嬉しいの! 子どもたちにすごくよくしてくれるし、子どもたちにも大人の男性の影響力が必要なのよ。ただ、いったい彼をどこにおけばいいのかしら? 夏にここへ来たときにわかったでしょうけど、我らが広大なお城には、ゲストルームっていうものがないの。結局、パーシーさんはドクターの研究室に居場所を見出して、薬品類は廊下の突き当たりにある物置へお引越し。パーシーさんとドクターは、自分たちだけで勝手にそんなことを決めちゃって。せいぜい二人で不便な思いをしてたらいいんじゃないかしら、私の知ったことではありません。
 大変! いまカレンダーを見たら、もう18日で、クリスマスまであと1週間しかないじゃない。諸々の計画が、あと1週間でみんな終わるのかしら? 子どもたちはお互いへのプレゼントをつくってるところで、私のもとには内緒話がどっさり持ちこまれてきてるわ。
 昨夜は雪でした。今朝、男の子たちは森へ出かけて、集めた常緑樹の枝を、そりで曳いて戻ってきました。女の子たち20人は、午後いっぱい洗濯室にいて、窓に飾るリースをつくってた。今週の洗濯はどうしたらいいのかしらね。私たち、クリスマスツリーのことは子どもたちに内緒にしておくつもりだったんだけど、50人の子どもたちが馬車置き場の窓によじのぼって覗いちゃったから、残念ながら残りの50人にも話は伝わってるはず。
 あなたがぜひそうしろって言うから、子どもたちには、サンタクロースのお話をしっかり教えこんできたわよ。でも、あまり信じてもらえてないの。サディ・ケイトは、「どうして前には来なかったの?」って疑い深く質問してくる。でも、サンタクロースは今年こそ間違いなくやってくるのよ。私、一応の形式として、ドクターにお願いしておいたの。ぜひクリスマスツリーの脇で主役を演じてくださいって。まあ、彼は断ってくるだろうっていう確信があったから、補欠としてパーシーさんにもちゃんとお願いしてあったんだけど。ところが、これがスコットランド人のわからないところよね。サンディったら、いまだかつてない鷹揚さで引き受けてくれちゃったのよ。私、こっそりパーシーさんのほうを断らなきゃいけなかったわ!

(続く)

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