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ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.304~305

(続き)

 私、だんだんおかしな年寄りじみた性格になっていくみたいね。変化を好まなくなってきたの。自分の人生を何かに邪魔されたら、って考えるのも嫌。昔は、風景といったら火山の大爆発みたいなワクワクするのが大好きだったけど、いまなら広々した高原を選んじゃう。自分のいまいる場所が、いちばん居心地がいいの。自分の机やクローゼットや衣装だんすが、自分に合うように配置されてる。そして、ああ、来年自分の身に起こる大変動のことを考えると、言葉にできないくらい怖い! 世の男性が愛されているほどには、ゴードンが私から愛されてないなんて思わないでね。彼を愛してないわけじゃないの、ただ、孤児院の子どもたちのほうをもっと好きになっちゃうんだもの。
 数分前に、ちょうど乳児室から出てきた我らが医療顧問に会いました。アレグラは、この孤児院で唯一、厳格な彼の社会的関心を受けるという栄誉に浴してるの。彼はすれちがいざまに、急に天候が変わりましたねって礼儀正しく挨拶をするために立ち止まって、ペンデルトン夫人に手紙を書くときにはぜひよろしくお伝えくださいって。
 この手紙、旅に出してやるにはちょっと貧弱すぎる内容だったわね。あなたが聞きたがってるニュースのことなんてほとんど書いてないし。でも、丘の上にぽつんと立ってる小さな孤児院のことなんて、あなたがいま楽しんでるヤシの木やオレンジ畑やトカゲやタランチュラに比べたら、ずうっと遠くに感じられるに決まってるわ。
 そちらで楽しんでね、ジョン・グリア孤児院のことを忘れないで。
それに、
サリーのことも。

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