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ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.332~334

(続き)

 火事が起こったのは土曜の未明で、日曜になったら、近所じゅうの教会の牧師さんたちが、「孤児院が施設としてどうにか稼働するようになるまで、子ども1人か2人をお客として3週間あずかってくれるご家庭はありませんか」って有志を募ってくれました。
 その呼びかけへの反応には感動しちゃった。どの子も、30分たたないうちに行き先が決まったのよ。これが、将来的にどういうことになるか考えてもみて――今後、これらのご家庭は、孤児院に対して個人的な関心を寄せるようになるってことじゃない。それに、子どもたちへの影響も考えてみて。あの子たち、本物の家庭生活というものを知ることになるのよ。10人以上の子どもたちにとっては、個人のおうちの敷居をまたぐのは、これが初めてなんだもの。
 冬を乗り切るためのもっと長期的な計画については、この話を聞いて。カントリークラブに、キャディ用のクラブハウスがあるんだけど、冬期は使わないそうなのね。それで、私たちに使ってもいいとご丁寧に申し出てくださったの。そこはうちの裏庭と敷地がつながっていて、14人の子どもたちを、マシューズ先生の監督のもとに住まわせることになりました。食堂と厨房は無事だったから、子どもたちは食事と授業のときはこちらへ来て、夜になったら帰っていくの。半マイルほどの散歩になって、ちょうどいいわ。私たちは「となりの別館」って呼んでる。
 それから、ドクターの家のお隣に住んでらっしゃる、あの優しいお母さんみたいなウィルソン夫人――うちのロレッタのことですごく力になってくださった方ね――が、さらにあと5人を、週に4ドルであずかってくれることになりました。私がこちらへあずけたのは、家政に興味をもちはじめた、ちょっとした料理を習いたがってる、前途有望な年長の女の子たち。ウィルソン夫人と旦那さまは素晴らしいご夫婦だし、倹約家で、働き者で、素朴で、愛情たっぷりの方々なのよ。このご夫婦を見ておくだけでも、あの女の子たちのためになると思うわ。奥さんになるための実地訓練ってところね!
 うちの東側にお住まいの、ノウルトップの皆さんの話はしたわよね? 火事のあった夜に子どもたち47人をあずかってくれて、パーティーに集まっていたお客さんたちが、急遽保育士さんになってくれたって話。翌日になって36人は引き上げてきたんだけど、11人はそのまま向こうにいます。私、ノウルトップさんのことを、不愛想で意地悪な老人だとか言わなかった? 取り消すわ。これは謝らなきゃ。羊みたいに優しい方なの。こうして私たちが困ってるときに、あの親切な方が何をしてくださったと思う? ご自分の敷地にあった空き家をうちの乳児用にすっかり整えてくれて、お世話係として、ご自身でイギリス人のベテラン保母さんまで雇ってくれたの。それで、模範的な酪農場で搾った上質な牛乳を、赤ちゃんたちに飲ませてくれるのよ。この牛乳については、どうしたものか何年も悩んでいた、っておっしゃるの。1リットルごとに4セントの赤字が出ちゃうから、売ることができないんですって!
 A室にいた年長の女の子たち12人は、新しくできた農夫の住居に住まわせました。気の毒なターンフェルト夫妻は、2日住んだだけで、村に追いやられちゃった。でも、あの人たちがいたって子どもたちの面倒を見るのに役立ってくれるわけでもないんだし、子どもたちを住まわせるところが必要なんだもの。この女の子たちのうち3、4人は、養家から「手に負えない」って返されてしまったことがあって、かなりしっかり監督しておかなきゃいけないの。そこでどうしたと思う? 私ね、ヘレン・ブルックスに電報を打って、出版社を辞めてうちの女の子たちの面倒を見てくれないか、って頼んだの。彼女なら絶対にうまくやれるって、わかるでしょう。彼女、一時的にってことで引き受けてくれました。かわいそうに、あとから取り消せない約束事にはこりごりしてるのよ。人生に起こることはなんでも、ひとまず試してみたいんですって!
 年長の男の子たちには、特別に素敵なことがありました。J.F.ブレットランド氏から、感謝の贈り物をいただいたの。彼は、ドクターにアレグラを救出したお礼を伝えに来て、長いこと、孤児院に何が必要かを話し合っていました。で、J.F.B氏は私のところへ戻ってきくると、3000ドルの小切手をくださったのよ。もっとしっかりしたインディアン・キャンプをつくる費用として。氏とパーシーさんと村の建築家が設計図を引いたから、うまくいけば2週間以内に、うちのインディアンたちは冬用のキャンプに移ることになります。
 うちの107人の子どもたちが焼け出されたからって、どうってことないわ。私たち、こんなにも優しい世界に住んでいるんだもの。

(続く)

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