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ジーン・ウェブスター「あしながおじさん」ペンギンブックスp.121~122

ロック・ウィローにて
6月19日

 教育課程が終わりました! 卒業証書は、たんすの引き出しの底に、いちばん上等なドレス2着と一緒にしまってあります。卒業式は、いいところでにわか雨に降られたりしながらも、通常どおり行われました。ばらのつぼみの花束をありがとうございます、とってもきれいでした。ジャービーぼっちゃまとジミーぼっちゃまも私にばらの花束をくれたんですけど、こっちは水をはった浴槽につけておいて、クラスで行進するときにはおじさまからいただいたほうを持ちました。
 夏の間は、ここロック・ウィローに来ています――たぶん、このままずっと。食費は安いし、あたりは静かで、作家生活を送るのにぴったりです。創作に苦悩している作家にとって、これ以上に求めるべきものがあるでしょうか? 私、自分が書いてる小説に夢中です。起きてる間はずっとこの小説のことを考えてるし、夜、寝てる間はずっと夢に見ています。私に必要なのは、平和と安らぎ、そして執筆に費やせるたっぷりの時間だけ(その合間には、栄養のある食事も)。
 ジャービーぼっちゃまが、8月になったら1週間くらいこちらに来るそうです。あと、ジミー・マクブライドも夏の間のどこかで立ち寄ってくれるって。ジミーはいま、証券関係の仕事をしていて、債権の営業で各地の銀行をまわってるんです。四つ角にある「農民国立銀行」に来るのと私に会うのを、同時にやってしまうつもりですって。
 ロック・ウィローだって、社会からまったく隔絶されてるわけではないってこと、これでおわかりでしょう。私、おじさまが車で立ち寄ってくださるのもお待ちしてたんですよ――でも、いまとなっては、ほぼ望みなしってことがわかりました。おじさまが卒業式に来なかった時点で、私、おじさまのことは心から消し去って、永遠に葬ってしまいましたからね。

ジュディ・アボット学士

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