ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.305~306
12月11日
ジュディへ
ジャマイカからお手紙届いてます、ジュディ2世ちゃんが旅行を楽しんでるようでよかった。そっちで住んでる家のこと、細かいところまで教えて。写真も送ってね、そしたら家の中にいるあなたを見られるじゃない。自家用の小型船があるなんて愉快でしょうねえ、それで近隣の楽しい海辺をめぐってこられるなんて! 持っていった白いドレス18着は、もう着古しちゃったかしら? パナマ帽を買うのはキングストンに着くまで待ちなさいよってあなたを止めてあげたこと、いまとなってはよかったと思わない?
こちらでは、物事はすこぶる平常運転です、記録に残すようなわくわくする出来事もなく。あなた、メイベル・フラーを覚えてるかしらね――ほら、踊り子の娘で、ドクターが嫌ってる子。あの子を養子に出したの。私、養家の奥さまには、メイベルじゃなくてハッティ・ヒーフィーを引きとってもらおうとしたんだけど――聖餐杯を盗んじゃった、おとなしい子ね――でも、全然だめ! メイベルの美しいまつ毛が決め手だったわ。結局、気の毒なマリ・バシュキルツェフも言ってたように、大事なのは可愛いってことなのよね。人生は、それですべて決まっちゃう。
先週、あわただしいニューヨーク訪問のあとでこちらへ帰ってきて、私、子どもたちに短いお話をしたの。いまちょうど、ジュディおばさまが大きなお船で旅に出るのを見送ってきたところなのよって。で、これを言うのはちょっと申し訳ないんだけど、子どもたちは――少なくとも男の子たちは――ジュディおばさまにはあっというまに関心を失ってしまって、その船のほうに興味津々なの。船では1日に何トンくらいの石炭を焚くの? 全長はどれくらいなの、馬車置き場からインディアン・キャンプに届くくらい? 船には大砲があるのかな、もし海賊が襲ってきたら持ちこたえられるのかな? もし船内で暴動が起こったら、船長は誰彼かまわず撃ち殺すの? そのあと陸についたら、船長は縛り首になっちゃう? 私の面目は丸つぶれだけど、話を終わらせるためにサンディを呼ぶ羽目になっちゃった。私、理解しました。世界一の知性を備えた女性だって、13歳の男の子の頭から飛び出してくる、あんな特殊すぎる質問に対応できるわけがないわ。
(続く)
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