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ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.314~315

大好きなジュディへ
 もし今日、サリーからの明るい陽気な手紙を期待してるなら、これは読まないでおいて。人の一生は冬の旅路よ。霧、雪、雨、泥、霧雨、寒さ――ひどい天気! ひどい天気だわ! あなたのほうは、日光が満ち溢れ、オレンジの花咲く素敵なジャマイカにいるっていうのにね!
 私たち、百日咳にかかってしまいました。2マイル先で汽車から降りたら、すぐ私たちのゲホゲホいう咳が聞こえるはずよ。こんな病気どこからもらってきたのか――集団生活の素敵なところよね。料理人は出ていってしまいました――夜のうちに――スコットランドで言うところの「夜間逃避行」。彼女がどうやって持ち出したのかわからないけど、とにかくトランクもなくなってた。彼女がいなくなって、厨房の火も消えてしまいました。水道管は凍結。配管工の人が来て、台所の床板はみんな剥がされちゃった。足が腫れてる馬も1頭います。そこへとどめをさすように、我らが陽気で有能なパーシーさんまでが、深い、深い、深ーい絶望の底に沈んでしまいました。この3日間は、彼に自殺を思いとどまらせることができるか、我々も自信がないくらいだったわ。例の、デトロイトのお嬢さんったら――薄情な生意気娘だって私にはわかってたけど――、パーシーさんに指輪を送り返すっていう正式な手続きも踏まずに、自動車数台にヨットを持ってるっていう男性と結婚しちゃったの。パーシーさんに起こった諸々の出来事の中で、これほどいいことってないと思うんだけど、本人がそうと気づくまでには長い長い時間を要しそう。
 うちの24人のインディアンたちが、また屋内へ戻ってきました。この子たちを中へ戻さなきゃいけないのは残念だったけど、キャンプの小屋は冬に備えたつくりじゃないものね。とは言っても、子どもたちは居心地よく屋内に収まりました。新しい非常階段のまわりに、広い鉄製のベランダをつけておいたおかげ。子どもたちをガラス張りのテラスで寝かせるっていうの、ジャービスさんの名案ね。乳児室には赤ちゃんたち用のサンルームも増築されて、素晴らしいわ。これで私たち、うちの小さな子たちが、たっぷりの空気と日光のもとですくすく育つ様子を見られるってわけね。

(続く)

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