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ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.324~326

(続き)

 ウィザースプーンさんは3階へ駆け上がり、その間に私は電話へ走って――ああ、もう交換局に一生つながらないかと思った! 交換手は寝てたんじゃないかしら。
「ジョン・グリア孤児院が燃えています! 火災警報を鳴らして、村の人を起こしてください。あと505番につないでください」
 1秒後にドクターにつながりました。あの、冷静で落ち着きはらった声を聞くのは、あんまり嬉しくなかったわ!
「こちらが火事です!」
 私は叫びました。
「急いで来てください、男の方をなるべくたくさん連れてきて!」
「15分で行きます。湯船に水を張って、毛布をつけておいて」
 と彼は言って電話を切りました。
 私は廊下に走って戻りました。ベッツィが非常ベルを鳴らしているところで、パーシーさんは早くもB室とC室のインディアン部隊を避難させたあとでした。
 我々が考えたのは、火を消すよりも先に、子どもたちを安全な場所へ移さなければということ。それでまずG室に入って、ベビーベッドを巡回し、赤ちゃんと毛布を抱えては戸口まで運び、インディアンたちに渡して、1階へ連れていってもらいました。G室もF室も煙が充満して、子どもたちは死んだように眠っているものだから、起きて自力で歩いてもらうことなんてできないの。
 ここからの1時間、私は何回神さまに――あとパーシー・ウィザースプーン氏に――感謝したことか。毎週私を困らせた、あの騒々しい避難訓練のおかげだわ、と。年長の男の子たち24人は、きちんとパーシーさんの指示に従って、1秒だってあわてることはありませんでした。この子たちは4つの部族に分かれて、小さな兵隊さんみたいに、それぞれの任務についてくれたの。2部族は、寄宿舎を無人にするのを手伝って、怖がる子どもたちの面倒を見てくれた。1部族は、消防車が来るまで貯水槽のホースから消火活動をして、残りの子たちは荷物の救出作業。シーツを床にばっと広げたところへ、棚や整理だんすの中身を投げ入れて、しっかり包んで階段から投げ落とすの。子どもたちが前日に着てた服以外は、しまってあった衣類も、職員の私物も、ほとんどは無事だったわ。でも、衣類に寝具に――G室とF室にあったものはみんな燃えちゃった。この2部屋は煙でいっぱいだったものだから、最後の子ども1人を避難させたあとは、危なくて中に入れなかったのよ。

(続く)

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