見出し画像

ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.288

ジュディへ

 ドクターと私が、あのすれ違いから歩み寄れたのかどうなのか、まったくわからない、と断言させていただくわ。丁寧な謝罪文を送ったんだけど、なしのつぶてだったの。今日の午後までここには寄りつきもしなかったし、来たら来たで、不幸にして起こった例の事件には、まばたきする時間ほども触れやしない。話題はもっぱら、乳児の頭皮にできた湿疹にはイクチオール軟膏が効く、ってことだけ。サディ・ケイトがその場にいたものだから、そこから猫の話題に移ったわ。ドクターの家のマルタ猫に仔猫が4匹生まれたそうなんだけど、サディ・ケイトは仔猫を見るまでじっとしてられないの。何がなんだかわからないうちに、明日の午後4時に、サディ・ケイトを連れて、その哀れな仔猫ちゃんたちを見に行くってことで話がついてしまいました。
 そしたらドクターは、礼儀正しいお辞儀を一つして、あっさり帰っていっちゃった。どうやらこれで終わりみたい。
 日曜に書いてくれた手紙が届いたわ、家を借りることにしたっていう話を聞いて喜んでます。当分の間あなたがご近所さんになるなんて、最高だわ。ここの改革も、あなたと会長さまが目と鼻の先にいてくれれば、どんどん進むはずね。でも、8月7日よりも早くこちらへ来ちゃったほうがよさそうじゃない? いま時分の都会の空気って、体にいいものかしら? あなたみたいに献身的な奥さん、見たことないわ。
 会長さまによろしく。

S.McB.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?