ジーン・ウェブスター「Dear Enemy」ペンギンブックスp.308~309
ジョン・グリア孤児院にて
土曜日
敵さま
昨日、うちの男の子たちにあれほどの素晴らしい1日を過ごさせてくださったことへのお礼を言おうとしたのに、先生はずいぶんとそっけない態度でしたよね。それで私、感謝の気持ちを半分もお伝えすることができませんでした。
本当にどうしちゃったんですか、サンディ? ちょっと前は、とてもいい方だったのに――ときどきではありましたけど。でも、この3、4か月は、ほかの人にだけよくしてあげて、私には全然じゃないですか。
最初の頃から私たち、ずいぶん長いこと、誤解とばかげた諍いの中にいましたけど、一つずつ乗り越えて、より強固に理解し合えるようになったと思うんです。私たちの友情は、しっかりと根を張って、どんな衝撃にも耐えうることのできるものになったと、私は思っていました。
そんな矢先、6月のあの夜に、思いもかけず先生に我々の失礼な会話を聞かれてしまって。あんなこと、まったく本気で言ってたわけじゃありません。でもあれ以来、先生は私から距離をとってしまいました。本当に、私すごく悪かったと思っていますし、謝りたかったんです。ただ、先生の態度には、そうさせてくれないものがあります。言い訳したいとか、事情があったとか言うつもりはありません。そんなものありません。先生だって、私が時にどれだけくだらない、ばかな人間になるかご存じでしょう。私は、軽薄で、愚かしい、つまらない人間ですが、中にはちゃんと芯があります。ですから、その愚かしい部分については見逃していただきたいんです。ペンデルトン夫妻はそんな私をずっと前からよく知っています、そうじゃなければ、私をここへ送りこんだりはしなかったはずです。私、真摯にこの仕事に打ちこんできました。その理由の一つは、ペンデルトン夫妻に、自分たちの判断は間違ってなかったと思ってほしかったから。一つは、「小さなかわいそうな子どもたちに、彼らが本来受けるべき幸福を与える」という事業に、心から興味をもつようになったから。でも実際のところ、理由の大半は、先生が私に対して抱いたであろう「軽薄な人間だ」という第一印象は誤りだった、と先生に認めさせたかったからなんです。6月に玄関先で起こった、15分間の出来事は、記憶から消し去っていただけませんか。かわりに、私たちがカリカック一族の本を読みながら過ごした15時間のことを思い出してはいただけませんか。
私たちはまた友だちに戻ったと思いたいんです。
サリー・マクブライド
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