体験が大切。とはいうものの…
私の運営する【もうひとつの学校KOCCHI】では多様な「体験」の機会を大切にしています。
多様な体験をすることで、いつか、そして、何度か訪れる人生の岐路において、想像できる道(選択肢)の種類や幅を拡げることができると信じているからです。
人はひとりで想像もできるし、考えることもできます。
でも、ひとりの人間が想像できる範囲には一時的な限界があると思っています。
インプットないところにアウトプットがないように、想像や思考は知識と経験から生まれます。
「想像と思考の材料をつくるのが体験」と言ってもいいかもしれません。
そのように考え、KOCCHIでは活動の場作りを細々と続けていますが、私の中に下記のようなモヤモヤがありました。
(これは本当にやる意味があるんだろうか…)
本当に意味があるかどうかわからないことに時間をかける。
「そういうのが大事なのよ」
という声もどこかから聞こえてきそうですが、私の中には違和感がありました。
先日、山形庄内を拠点に事業を展開する【ヤマガタデザイン株式会社】さんの【キッズドームソライ(SORAI)】という学童やフリースクール事業を運営する施設を研修させていただきました。
そこで館長の渡邊さんから伺ったお話の中にひとつのヒントがありました。
それは「感謝の気持ち」でした。
SORAIさんの取り組みのひとつに、「みんなプロジェクト」というものがあり、現在は「庄内の農と食」をテーマとして、同社が運営するホテル、【スイデンテラス】や【ヤマガタデザインアグリ】といった、地域の方々と連携し、 野菜づくりや調理に取り組む活動があります。
最終的には子どもたちがみんなが考えあげた料理がホテルのメニューとして多くの方に提供されます。(私も実際にホテルのレストランでいただきました。)
そして、この一連の取り組みを経て、子どもたちが最後に得られる報酬は「ありがとう、美味しかった!」という感謝の気持ちです。
このエピソードを聞いたときに、私のモヤモヤはこれだったのかもしれないと思いました。
言い換えると、私たちが良かれと思ってやっていた継続的な体験機会の付与は「与える側」「与えられる側」という役割を当たり前にしてしまっていたり、どこかで「感謝の気持ち」というものを放置したりさせたりしてしまっていたのかもしれない…という気付きでした。
しかし、それと同時に私の中には疑問も湧いてきました。
「感謝の気持ち」は大切だけど、これはどのようなカタチで子どもたちに伝えたら良いのだろうかという疑問です。
「人に感謝されることを考えてやってみましょう。」
というのもなんだか無理矢理考えてさせてしまうことになりそうだし、不自然極まりないな。。。という感じがします。
何より、子どもたちがそこにモチベーションを持って取り組める姿が想像できませんでした。
子どもたちが「やりたい、やってみたい」という活動の結果、自然と他者の中に「感謝の気持ち」が生まれる活動…。それってなんだろ…。
そんなことを考えていたら「これって昨年KOCCHIでやった起業体験の授業と同じじゃん!」というひとつの答えにたどり着きました。
昨年の夏、KOCCHIの子どもたちは利府町の浜田地区というところで開催された大規模な夏祭りに出店しました。
昨年は出店に先立ち、2回の準備プログラムを設定。
参加者の子どもたちは、「仕事とは何か」「お金とは何か」を学んだ後に、「そのお祭りで何をしたら大人が喜んでお金を払ってくれそうか」などを自分達で考え、大人たちの本気出店に横並びで出店し、まったく売れない、客が来ないという失敗体験&完売盛況という成功体験をしました。
準備こそ大変でしたが、お客さんからの「感謝の気持ちを頂くという体験」、「子どもたちの感情が振動する体験」の機会をつくることができたと今振り返ってみても思います。
(よし!今年もまたアレをやってみよう!)そんな気持ちになりました。
まだまだ手探りの日々が続きますが、「感謝の気持ち」「感情の振動」を意識してこれからも子どもたちがおもしろがってくれるような多様な体験機会をつくっていきたいと思います。
最後に、私の訪問を快く受け入れ、気付きと内省の機会をくださったSORAI関係者の皆さまに心からの感謝をお伝えし、この記事を締めくくりたいと思います。
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