広尾の新「ザムザムの泉」に意を決して行ってみたら中華の新しい扉を開いてしまった話。
こんにちは。葡萄の飲み物です。すっかり幽霊noteになってしまっていたこちらに久しぶりに書くにもかかわらずワインや飲酒の話じゃないのですが…
ちょっと感動して書かずにいられなかったのでよければお付き合いください。
西川口にあった「ザムザムの泉」というお店をご存知でしょうか。
東京拉麺大賞特別賞なども受賞してる「蘭州精品牛肉麺」が有名なお店です。
こちらのお店が西川口から都内、しかも港区広尾という超一等地!に移転するという話題は中華好きの方々での2020年のビッグニュースの1つになりました。
しかし西川口から広尾に移転するにあたって以前よりも値段もかなり上がるということも公表されて
実際に早速訪れたTwitterの中国通の方々の間でも賛否両論あるようです。
私も中国在住経験(2010年代前半に2年ほど)がある中華好きの端くれとして、お店の近くを通ることがよくあり、オープンを心待ちにしつつも、値上げのお知らせを見て内心少し躊躇していたのですが、緊急事態宣言も発令され出かける機会もこれから更に少なくなりそうなので、今回は意を決してお店に入ってみました。
〜入店〜
席はカウンター10席ほど、しかしスペースは広くてゆったりとした店内。オープン時間直後だったからか、お店に他のお客さんはおらず、奥の席に案内してもらいました。
〜着席〜
まず温かいお茶を出していただきました。
「え、、なに、、これ、、美味、、、」と言葉を失う私。
これは蘭州のお茶だそう。棗や葡萄?(レーズンとお店の方が仰っていたような)など色んな植物の実がブレンドされていて、香り高く複雑な味わいですが、クセが強すぎなく滋味深い…初めて味わう味です。
お店の空気にもスープの香りなのか、薬膳らしき様々な漢方がブレンドされたようないい香りが漂っています。
席に座り、お茶を飲み、一息つく。このひとときで「有名なラーメン屋に来た」という意識から「中華薬膳の高級店に来た」という認識に一気に切り替わりました。
メニューはランチコース料理3種。(税抜3200円~)私はデザート付きの真ん中のコースを注文。デザートもいただくことも考え「麺って少なめとかできますか」と恐る恐るお聞きしたら快諾してくれました。
営業が始まったばかりの時間だったこともあってか目の前(パーテーション越し)で麺を生地からこねはじめるところから拝見。
麺になっていく生地を眺めながら、先ほどの美味しい蘭州茶(おかわり)をじんわり飲んで待つこと約20分。
手打ちの生地は10分以上よくよくこねられ、最後に手際良くサッと麺の形に伸ばされて鍋に投入!数十秒茹でられて器にイン!
ついに3000円超の麺料理の登場です!!!
〜いただきます!〜
まずはスープを一口。。おおおおおおおなんでしょうかこの奥深い味わい。。これ、高級中華でしょ。味が3Dです。牛肉の深み、薬膳の奥行き、広がり、、なんとなく想像してた味よりも更に更に奥深く、でも食べ飽きない後味のサッパリさ…これは止まらない…!
麺は水分が多く、もちもちでとても柔らかい。
「手打ちだから粉成分を少なくできて、女性の方ななどにも食べやすいと思います」
と教えてくださったのですが、そう!!まさにそうなんです!!!私は昼食に麺類を食べると血糖値がバク上がりして午後眠くなってしまうのでいつもは避けているのですが、この麺は粉成分が少ないからかお腹にドーンとこず、ぺろり完食。
ちなみに午後も眠くなりませんでした。
「ラー油をかけて、よく混ぜて食べてくださいね」
と教えていただいて、よく混ぜて食べました。
ただ確かに、ラー油も具のお肉も大根もとてもとてもおいしいんですが…
やっぱりこの最高の3Dスープを澄んだ状態でもっと飲みたい…!!と思いながらスープを飲み干していたら隣の方にお店の方が
「スープ少し追加しますか?」
との声。
「えっ!!!私も飲みたい!!飲みたいです!!!!!」と物欲しそうに見ていたら空になったお椀に少しスープの追加をいただけました。
この澄んだスープの深みよ悦びよ滋味深さよ……。至福。
さて、デザートは梨のシロップ漬け
これも枸杞の実や干杏?のような実が入っていて、薬膳風味のほんのりした甘味。これも中国在住のときを思い出す味だなぁ…。
ところで、私はNetflixの「美味の起源」とかBS12の「舌先の上の中国」というCCTVが中国各地の伝統食の独特な作り方や食べ方を取材したドキュメンタリーが大好きなのですが、
いつ見ても思うのが「めっちゃ美味しそう…食べに行きたいけど絶対現地に行ってもこのお店や料理ににたどり着くの無理でしょ」
だって中国大陸は広いし深い。。地域が変わると言葉も民族も変わります。そんな中国地方都市に行って、番組で紹介されてるような美味の真髄のようなお店に一見でたどり着けるわけがない…と指を咥えて見ています。
しかし、「ザムザムの泉」のお店の方曰く、
「この蘭州牛肉麺は、蘭州でまだまだ物価も安かった数十年前の作り方で作っている。今の流通価格で作ろうと思ったらうまみを出すために化調とか使ってるところもたくさんある」
「親族もみんな蘭州で料理店などを経営しているが、たぶん使っている素材の質は日本が一番よいので一番おいしいはず」
ん?これって…?私がいつも指を咥えて見ている「美味の起源」に出てくるような、現地で連綿と受け継がれてきた伝統的な作り方そのもので作られた味…ってことではないですか???
しかも現地の質を上回るかもしれない素材で…??
遥か甘粛省蘭州からわざわざ東京の港区に来てくれて、現地よりも美味しい蘭州料理を食べさせてくれる…こんな幸せなことがあるでしょうか。
今後は、オペレーションが落ち着いてきたら他のメニューも追加し、より「蘭州料理店」らしくしていきたいとのこと。
ここ数年、都内では中国郷土料理をコース仕立てなどで提供する雲南料理、広東料理、四川料理などの個性的な人気レストランが増えています。
「ザムザムの泉」はその蘭州版になるのでは?ととてもワクワクしてきました。
よく考えるとお店の名前は「蘭州牛肉麺 ザムザムの泉」ではなく「蘭州料理 ザムザムの泉」。最初からこの方向性を目指していたんですね…!
賛否両論のお値段については、個人的には確かにランチに気軽に通える価格ではありません。ですがこの「他にないとっておきの味」は、ちょっと素敵なレストランでコース料理をいただくのと同じくらいの価値を感じられるなあと思いました。
新しい体験として興味を持っていただいた方に味わってほしいし、今後の展開を楽しみにしつつ、私はまた行きたいなと思いました。
※スープ追加はたまたまお客さんが少なかったからしてくれたのかもしれません。
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