山を走ると人生が豊かになるvol.1 高島由佳子・敏光夫妻 信越五岳を振り返る
なぜ山を走るのか? その理由は人それぞれ。山を走ることに魅了された人々にお話を伺い、トレイルランニングの魅力を伝えるシリーズ。
第1回は、信越五岳トレイルランニングレースでお馴染みの高島夫妻です。
高島由佳子さん・高島敏光さんとは?
夫婦とも新潟県妙高市在住のトレイルランナー。
高島由佳子さんは、元クロスカントリースキーの国体選手。40歳を過ぎてから、ご主人の勧めでトレイルランニングを始め、初めて出場したトレイルレースが信越五岳110km。その後、トレイルランに打ち込み、信越五岳をはじめ、数々のウルトラトレイルレースで優勝、上位入賞を果たす。
高島敏光さんは、地元の郵便局に勤めながら、トレイルランを長年続けている。信越五岳には、1回欠場した以外はすべて出場。2019年には念願の信越五岳100マイルを完走(ペーサーは由佳子さん)。黄色いヘルメットとヒゲという”カールおじさん”風のスタイルで走ることで有名な、レースの人気者。
夫婦で掴んだ100マイル完走
2019年、敏光さんは3度目の信越五岳100マイルに挑戦。17年の第1回の信越100マイルは完走したものの、悪天候の影響でコース短縮になってしまった。18年はDNF。19年はなんとしても完走したかった敏光さんは、由佳子さんにペーサーを頼んだ。
由佳子さんは、100マイル中の最後の60kmをご主人を引っ張って走った。コースを知り尽くしている由佳子さんはこう言う。
「信越100マイルは、100km過ぎてからは『絶対に完走するんだ』という強い気持ちが一番重要。心が折れてしまったら、完走できない」。
疲労困憊の敏光さんに、激を飛ばし、決して諦めさせず、走れるところはすべて走らせた。足を濡らしたことで足裏の皮がめくれ、激痛に苦しむ敏光さんに「骨折しているわけじゃないんだから、皮の1枚や2枚なんだ。痛みの感覚を遮断しろ」と言い、なんとか敏光さんを前に進ませた。
「他人だったら、ここまで厳しくできなかった。夫婦で走ることはもうないかもしれない。とにかく行けるところまで行かせようと思った」と由佳子さん。
夫婦で我慢に我慢を重ね、敏光さんは制限時間の3分前にフィニッシュゲートをくぐった。
念願の100マイラーになり、「由佳子がいたから完走できた」と、敏光さんは由佳子さんに感謝の気持ちを持ち続けている。
信越五岳トレイルランニングレースは地元の誇り
二人にとって、信越五岳は初めて出場したトレイルレースであり、コースの一部が地元を通過することもあって、特別なレースだという。二人ともこのレースを走ることで、いろいろな経験をさせてもらったと思っている。
「石川弘樹さんの思いが詰まったコースレイアウトなんですよ。石川さんはコースに五岳を巡る物語性を持たせているそうなんです。スタートからフィニッシュまで、トレイル率が高く、さまざまな景色を見ることができて、大好きなレースです。もちろん、キツいところはあります。そんな時には、石川さんの顔が浮かんできて、『負けるものか!』と思います。キツい登りを登りきったと思ったら、気持よく下れるコースに変わったりして、”石川マジック”にかかって、どんどん前に進んでいけるんですよ」と、由佳子さん。
100マイルと110kmというロングのカテゴリーを同時に開催するこのレースの運営の大変さがよくわかるので、今後は運営側にまわり、地元の誇りであるこのレースを支えていきたいと考えている。
最後にこんな会話が。
敏光さん「60歳になったら、また信越五岳を走ろうかな」
由佳子さん「じゃあ、またその時はペーサーするよ」
信越五岳トレイルランニングレースがある限り、二人の姿はそこにあり続けるのだろう。
■トレイルレースをつくる楽しみ ~信越五岳トレイルランニングレース、コース整備体験レポート~
文=一瀬立子
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