評価損(格落ち損)を勝ち取るために ~揃えるべきもの~

 先の記事では、法律に詳しくない全くの素人でも、必要な書類と資料さえ揃えれば、弁護士を通さずとも十分に保険会社との交渉が可能であることを述べました。

 弁護士特約を使うか、自分で弁護士を探してすべてを任せてしまうのもアリだと思います。ただ、依頼したはいいものの、実は企業の法務がメインで交通事故は全くの専門外だったため、全然親身になってくれなかった、思った通りの結果にならなかった、なんていう残念なパターンもあるようです。自分で弁護士を探すなら、交通事故に強い弁護士が良いでしょう。

 筆者は新車購入後4か月ちょっとで追突されましたが、弁護士を通さずに自分なりにネットや書籍でいろいろと調べ上げ、必要な書類と資料を揃えて相手方の保険会社に送付した結果、「評価損を全額認定する」との回答を得る事が出来たのです。

 早速、交渉をするにあたって揃えるべきものを具体的にお教えします。

揃えるべき書類と資料

 順番については特に決まりはないですが、話の筋が通るように並べて頂ければ良いかと思います。ビジネス文章を作るのと何ら変わりありませんね。

1.評価損賠償請求書
 
こういう経緯や理由で評価損の賠償を請求しますよ、って宣言する書類。所感としては、交渉が上手くいくかどうかはこの書類の書き方や内容が最も重要で、これがしっかり書ければ交渉の50%は終わったようなものです。なお、評価損賠償請求書という呼称は筆者が勝手に名付けたもので、世間一般に通用するものではありません。

2.交通事故証明書
 交付には条件があり、事故発生後に警察に通報し、事故処理をしてもらっていないと発行できません。発行するには有効期限がありますが、常識的に事故直後に警察への通報はしているでしょうから、特に問題ないでしょう。必ずしも必要なものではありませんが、念のため入手しておくことをおススメします。1通につき600円の手数料がかかります。

3.事故状況説明書
 事故の当事者、事故発生年月日、事故発生地点の住所等に加え、事故発生時の状況(事故態様という)を図で説明するものです。書式は、自分が契約している保険会社に問い合わせて郵送してもらうか、検索すれば出てきますので、それを使います。過失割合に納得しているのであれば、必ずしも必要なものではありません。筆者の場合は、停止状態での追突で過失割合は0:100でしたが、念のため作成しました。

4.修理費用請求書
 修理が完了したらディーラーが出してくれます。修理金額のほか、初度登録年度や入庫時の走行距離も記載されているため、それらを証明する重要なものです。保険会社によっては、初度登録後1か月以内、走行距離3000km以下でないと評価損を認めない、などと言い張るところもあるようですが、初度登録後3年以上、10万km近い車両に対しても評価損が認められたケースがあるので、自車との比較をするのに必要です。

5.事故減価額証明書 または 外板価値減価額証明書
 貴方の車は、事故(修復)によってこれだけ下取り価格が下落しますよ、って証明する書類。一般財団法人日本自動車査定協会が発行してくれます。ここでの査定額が賠償請求の上限額になるとお考えください。発行するには、査定士に実車を見てもらう必要があります(要事前予約)。出張査定もやっています。筆者は修理後に協会に車を持ち込んで査定してもらいました。修理前の査定も可能ですが、念のため予約の際に尋ねてみると良いでしょう。各都道府県に支部があります。

 査定の際は、4.の修理費用請求書または修理見積書が必要です。後述する修復と見做す部位が破損していなければ、査定しても意味がありませんので、見積書を見ればどの部位を修復したかが事前にある程度分かるようになっています。

 注意点としては、修理前に入手した修理見積書を以て査定してもらっても、修理が完了して最終的な確定金額が出た際、確定金額の方が高くなってしまう場合があることです。事故減価額証明書で認定される金額は、一般的に修理費用の3割が相場であり、認定金額が目減りする可能性があるためです。ただし、逆のパターンもあり得ますので、どちらが良いとは一概には言えません。

 事故減価額証明書と外板価値減価額証明書の違いは、修復箇所の部位と寸法によります。鈑金修復を行っていても、修復と見做さない部位や、修復と見做す部位であっても、カードサイズ程度よりも小さい修復痕であれば、修復歴ありとは認めない基準になっています。筆者の場合は、修復と見做さない部位であったため、外板価値減価額証明書が発行されました。なお、事故減価額証明書よりも、外板価値減価額証明書の方が圧倒的に査定額(=評価損)が低くなりますので、留意ください。

 査定士の方のお話だと、修復痕の大小に関わらず修復歴ありとしてしまうとユーザーが不利益を被るので、最近上記の判定基準に変わったそうです。ただし、修復と見做さない程度の修復痕がある車両であっても、見る人が見れば簡単に見破られてしまうため、特にトヨタ系のオークションでは修復歴ありの扱いになり、下取り額が大幅に下がってしまうとのことでした。

6.5.の査定料金領収書
 普通車で、査定料金は7150円、簡易書留の送料404円で、計7554円でした。その場で発行してもらうことはできず、後日簡易書留での送付となります。評価損と合わせて賠償請求が可能です。

7.過去の裁判例
 賠償請求の主張に正当性を持たせるために必要です。注目すべきは、初度登録年月からの経過月数と、走行距離です。自車よりも事故発生時の車齢が古い、かつ走行距離が長いケースを引き合いに出して、私の請求は正当である、過去に裁判所が認めている、ということを主張しましょう。

 以上の書類をまとめて、保険会社に送付すればOKです。あとは先方の検討結果を待つだけです。同じ書類を加害者本人にも送付したというような情報も見かけましたが、保険会社のみでOKです。加害者本人が受け取っても、保険会社に一任するだけでしょうから。

もっと詳しく知りたい、反論される余地を少しでも減らしたい、手っ取り早く書類作りたいよって人向け

 次の記事では、実際に筆者が相手方の保険会社に送付した資料を参考に、書類作成をする上で気を付けた細かなポイントをお教えしますが、こちらについては、私が素人なりに多大な労力と時間を費やして作成したものであるため、有料記事とさせて頂きます。
 もっと詳しく知りたい、反論される余地を少しでも減らしたい、弁護士に依頼するのは面倒だけど、手っ取り早く書類を作りたい、という方は必見です。

 評価損の賠償請求について、筆者の経験をもとに得られた知見を惜しむことなく詰め込みました。これ程までに細かくかつ丁寧に情報やポイントがまとめられた記事は、書籍やwebサイトを含め他に存在しないと自負しています。きっと貴方の福音となることでしょう。

 そして、筆者が交渉した保険会社内では筆者の事例はほぼ確実に共有されているでしょうから、同じ保険会社(社名は伏せますが)の場合、この方法が使えない可能性も無きにしも非ず、ということをご理解ください。

 ちなみに、相手方の保険会社の担当者は、上席も含めてここまで丁寧にまとめられた資料を初めて見たとのことで、あまりにも内容がしっかりとしたものであったため、「弁護士の方でしょうか?」と訊かれました。

 ある意味、筆者のような素人よりも圧倒的に法律に詳しい保険会社から”お墨付きを貰っている”とも言えるわけで、内容については、それ程の交渉力を持ったクオリティであるということです。仮に交渉がもつれて裁判に移行する場合でも、そのまま訴状や裁判資料としても使える内容ではないかと思います。

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