街は謎を転がす
今日は、尾崎世界観さんの『苦汁100%』の中の言葉(というかシーン)を紹介します。
私が方向音痴なのは、たぶん、街に謎が転がりすぎているからだと思う。
曲がるべき角の目印や通りの名前なんかより、ガードレールに引っ掛けられた小さな靴下や長らく張りっぱなしの臨時休業のお知らせが、どうしても気になってしまう。
ここ最近は、近所の家の前にあるプランターに「花を盗むな!」と書かれた棒が刺さっていることが、とても気になっている。
花というのはそんなに長く持つものではないだろうから、転売するために盗まれたとは考えがたい。つまり犯人は、ご自宅用に持ち帰った可能性が高い。
しかし、盗んでまで花を楽しみたいという気持ちって、どんななんだ。花を愛でるというのは、ほっとしたいとかほっこりしたいとか、あったかい息漏れちゃう系の状態を求めて至る行動だと私は考えているのだけれども、盗んだ花でそんな境地にたどり着けるか?
そして、花を育てた人。気の毒なのはたしかなのだけど、なぜ盗まれたとわかったのだろう。動物が食べてしまう、とか、そういう可能性はないのか。何回も花がなくなっているのだろうか。花ある家は数あれど、いつもこの家の花ばかり狙われるのだろうか。花育て名人なんだろうか、この家の人は?
そして、「花を盗むな!」と書いてある棒が刺さってるプランターは、どんな花を植えてもその美しさがすべて帳消しになるような禍々しさを放っている。今は花がない。よかったかもしれない。ここにいては、どちらにしても、残された花たちは居心地が悪いだろうから。
そうこう考えているうち、雨の日も雪の日も
同じ洗濯物が干されているベランダのあるマンションに通りかかる。住人は攫われたのか?そうだとすればなぜ、10日に1回くらい、洗濯物がしまわれているのか。タオルが多い。とても多い。これはなぜか。
街にはあまりにも謎が溢れており、私の脳の何もかもが彼らに奪われる。
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