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侍ムービーの神様たち
方向音痴の私にとって、旅することと道に迷うことは、ほとんどイコールだ。
友達といれば、と思ったのは甘かった。雪のヨーロッパは手強い。ただでさえ慣れない街、白に覆われてしまうと、右も左もなくなった。
不運なことにとっくに日は暮れており、早く宿に戻らなくちゃ、と思うほど時間は進む。駅に行きたい。でも看板も読めない。ここがどこだか、わからない。
気づかぬうちにどんどん人気のない方に移動していき、心細さが限界に達したそのとき、夫婦の姿をした神様が現れた。
駅の場所を尋ねると、「連れて行くわよ」と妻。日本から来たことを告げたら、「私達、最近侍のムービーを観たのよ」と教えてくれた。彼女と静かな夫はずっと手を繋いでいて、横にいるだけで互いへの愛情が流れ込んでくるようだった。
お礼を言って別れた後、寒くて暗い夜が全部ひっくり返った気がして、道案内は幸せな人に頼もう、と心に決めたのだった。
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