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道の真ん中

旅先で、もし私がここで暮らしたなら、と想像を巡らすのが、好きだ。

朝ごはんはこの店のパンかな、とか、
食器はこの骨董市で揃えたい、とか。

その町には、大きな木に守られた神社があったから、やっぱりすぐに想像した。
「この町で高校生をしていたなら、ここで告白したかもなあ」

後日、その町の元高校生と話すことができたから、答え合わせをしてみよう、と思った。

なんでも、その子の友人が選んだ勝負の場所は、神社でなく、学校でもなく、「道の真ん中」だったらしい。

毎日好きで、どうにもならず、唐突に思いを告げ始めてしまった、らしい。
一世一代の大舞台、の横を、大勢の互いの知り合いが通り過ぎていった、らしい。

名前も知らない彼女の名誉のために結果は秘密にするけれど、ああそうだ、普通の道の上にも、人々の歓喜なり、無念なり、が、積み重なっているのだ。

随分、愛しいじゃないか。

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