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コンテンツ月記(令和三年、文月)

読んだもの、観たものを、書きなぐりのメモで記録します。完読できてないものも、書きたいことがあったらメモします。

すでに長めのレビューを書いてるものは、基本的に除いてます(…と言いながら、ここで書いてる感想も割と長いんだけど)。

今月は書きたいものがまだまだまだまだいっぱいあるので、たぶんもう1本は更新する気がする。たぶん。

==評価基準(特に記載したいときだけ)==
\(^o^)/ 乾杯。愛。最高の毒なり薬。
φ(..) 特別賞(今後思い出すだろうシーン有等)
==ココカラ==

■本

かわいい夫

山崎ナオコーラさんの本を読むのは、「えっ、こんな考え方をする人がいるのか」と知れるのが面白いから。しかも彼女は、自分の考えを人に押し付けないから。あくまで、「私は」そう考えているということを書いているのだ。そう伝わる書き方を丁寧にしている。そこが好きだ。

この本で一番衝撃的だったのは、ナオコーラさんは、別に老後に年金が返ってこなくてもかまわないと思っていることだった。

私は社会を信じている。
せっかく成熟した社会に生きているのだから、何百年か前のように家族しか信用できなかったり、親戚同士でしか助け合えなかったりするのではなく、もっと社会の仕組みを信用して良いのではないか。
今の時代では、決して「力を持った人と家族になりたい」なんて思うことなく、純粋に一緒に暮らしたい人と暮らし、助け合いは社会とすれば良いのではないか。
お金があれば、その都度、パートナーを作ることはできる。仕事のパートナー、家を建てるときのパートナー、老後の計画を立てるパートナー……。
それができないのなら、なんのためにお金というものがあるのか、という感じがする。家族間でしか助け合えないのなら、お金を流通させる必要なんてないではないか。

(『かわいい夫』より引用)

ちなみに私自身は、「自分が弱い立場になったときのために(というより、私は既にある面では「社会的弱者」なのだが。ますます弱くなってしまったときのために)、弱った人も絶望せず生きていける社会にしたい。それが社会だと思うから。そうじゃないなら人間が群れてる意味、ないから。そのために必要な税金なら払いたい」と考えているのだけれど、年金制度は世代間の不公平っぷりがあまりにも極端だと思うので、今の状態には賛成していない。今の社会は、信じるにはちょっとひどすぎる、という感じがする。信用できて経済力もある人が血縁にいないとかなりハードモードだし(家を借りるときや就職するときに保証人が必要で、それが家族(特に親)じゃないと審査が通りにくかったり別途お金を払わないといけないことなど)。ではどのような状態が理想なのか?もっと北欧などの福祉が厚い国の現状を調べてみたい(と、いつも書いている気がする)。

本の話に戻ると、以下の言葉も好きだった。

娘よりも、配偶者の方が繋がりが深いのだ。よく、「血の繋がり」という言葉を聞くが、そんなものはたいしたものではない。
〔中略〕
結局のところ、人と人との繋がりは、日々によってしか作られない。生まれつき持っている関係などないのだ。

(『かわいい夫』より引用)

ちょっと残念だったのは、結婚という制度への疑問をこれまでいろいろ書いてきたナオコーラさんが、なぜ結婚という形を採ることにしたのかが、あまりよくわからなかったところ。そういうことを期待してこの本を買ったので、言語化してほしかったな…。(しかしその後読んだ『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』で、自分の結婚制度へのモヤモヤポイントはだいぶはっきりした。この本についてはまた改めて書きたいけど、フェミニズム入門としてめちゃくちゃおすすめ!)

ボーイミーツガールの極端なもの φ(..)

再びナオコーラさんの本。私が読んだときはKindle Unlimited対象だった。

タイトルを見て、「男女間の恋愛に閉じた本でないといいんだけどな…(そういう本も世の中には要ると思うんだけど、恋愛=男女のものっていう価値観をこれ以上強化する必要はないと思うので、愛のいろんな形の物語が増えたほうがいいと私は思っている。「ふつう」という看板を掲げた強固な価値観に踏みつけられてる人いっぱいいると思うから)。ナオコーラさんならきっと風穴開けてくれると信じているけれど。でもこのタイトルなのか…」とちょっとざらざらした気持ちを抱えつつ読み始めたのだけれど、やっぱりナオコーラさんだった。もっとずっと軽やかだった。ハイタッチ。朝井リョウさんの『正欲』と併せて読むのがおすすめ。

キャラクターやエピソードがつながっている短編集なんだけど、そのうち自分にも恋愛と言うのが訪れるのだろうと思っているうちにおばあさんになっていた女性の話から始まって、さっそく引き込まれた。山崎ナオコーラさんの本は、平易な言葉で書かれているので疲れているときでも読みやすい。それでいて、新しい風を感じさせてくれる。

別の記事でおすすめした第五話の「『さようなら』を言ったことがない」のほか、第七話の「付き添いがいないとテレビに出られないアイドル」から始まる、内気なアイドル・美代梨と彼女につきそう友人・アカネ、同じ事務所の先輩・俊輔、の三人の話が特に好きだったな。

これまでの俊輔は男女が対になることを恋愛と言うのだと思い込んでいた。しかし、振られたって恋だ。想いを伝えられない片想いだって恋だろう。同性に恋をする人もいる。ひとりではなく何人もの人に恋をする人だっている。言葉も体も交わさない恋もある。絶対的な恋なんてない。ひとりひとりの、個人的な恋しかないのだ。

(『ボーイミーツガールの極端なもの』より引用)

体温のある語釈で定評のある(?)新明解国語辞典の「恋愛」の項目のことを思い出したりした。

あと、それぞれの話の冒頭に、その話をイメージしたサボテンの写真とそれについての説明が載っていて、面白かった(あるいは、逆なのかな。サボテンの恰好からそれぞれのお話を膨らませたのかな)。
たとえば、こんなふうに。

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(いずれも、『ボーイミーツガールの極端なもの』より引用)

サボテンの名前がそれぞれ技名みたいでかっこいい。このサボテンについては、「ファーのようには触り心地がよくない」って文が、みょうちくりんで良い。

私は、冷静な説明文のふりをしているくせに、書き手の気持ちや性格がはみ出てしまっているところを発見するのが好き。例えば、今我が家にあるきくらげのパッケージには「原木栽培のため、石づき等が付着している場合があります。選別除去していますが、付着していた場合にはご面倒でも取ってご使用ください」と書いてある(太字は私によるもの)。ここでわざわざ「ご面倒でも」と書いてるのに、はみ出た気持ちを感じる。この説明文の担当の人、ちょっと意地悪なタイプの人、あるいはいつも一言多いタイプの人、ではないかと想像してしまう。

■マンガ

ワタシはぜったい虐待しませんからね!

親に虐待された経験のあるあらいぴろよさんによる、育児コミックエッセイ。私が読んだときはKindle Unlimited対象だった。

まず、読んでる間中ずっと、夫の育児当事者としての意識が低すぎることが気になって気になってしまった…。たしかに仕事は忙しいのかもしれないけど、産後のぴろよさんはボロボロの身体なのに、彼女にだって仕事があるっていうのに、ほとんどお手伝い程度にしか育児に参加してくれない夫…!「私みたいな人間がお母さんしてていいんだろうか」と不安を吐露するぴろよさんに、「その議論は子供を宿す前にするもの」と言ってのける夫…!なんでこんなに他人事なのーーー!!!

私自身が勤め人だったとき、職場の研修で「悩んだときは、自分で変えられるものと変えられないものをまず確認して、変えられるものから解決策を探しましょう」というのを教わったけど、多くの親は「仕事(特に会社勤めの場合)」を「変えられないもの」ボックスに入れちゃってる気がする。たしかに転職ってすごく大変、成功する保証はないけれど、ボロボロになってる配偶者を目の前にして「でも自分にできることは何もない、だって仕事が忙しいから」って断言できるのはひどすぎませんか…。

(と思っていたところ、そのあと読んだ『大黒柱妻の日常』で少しだけ夫側の気持ちも想像できるようになった。あくまで少しな!『大黒柱…』は、主たる稼ぎ手を妻が担って夫の育児参加の割合が高くなったら、妻も『昭和のおやじ』的ムーブをするようになってしまう…これはなぜなのか…?とは言え、立場が入れ替わってもやっぱり男女で違う部分もある、これもなぜなのか…?というのをごりごりに考えていく思考実験的なマンガ。めちゃくちゃ面白いです。思うところめっちゃあるので、感想はまた改めて書きたいのですが)

『絶対虐待しませんからね』の話に戻る。

ぴろよさんが発見したライフハック「子供の理不尽な行動に怒りを感じたら、我慢するのではなく違う形に変換して外に出す」がすごくよかった。たとえば、子供に顔を殴られたとき、「顔殴られてマジ痛ぇ超ムカつく」と思ってもそのまま出さずに、〇ャンちゅうの真似をして「お顔ポコーッは痛いにゃぁん!」と発する、というのがこのライフハック。子供がしてくることは特に理不尽なことが多いと思うけど、大人同士のコミュニケーションでも一部応用できそう(体調不良とかでちょっとしたことでも過剰にイライラしてしまうとき、あるじゃないですか(ないですか?)。そういうとき、相手に「もーーぷんぷん!!!」みたいにおどけて伝えると、感情を抑え込まず、かつ、相手に過剰な心理的負担をかけず、怒りの波を乗り切れる気がします。相手によりますが)。

あと、子供が嫌がる歯磨きを乗り切った技も面白かった。(歯ブラシを敵に見立てて、「無理やり口の中に入ってきて、嫌だよね!」と子供に寄り添う演技をしつつ、途中で「こいつ、1日3回口に入ることを許してくれたら、もう乱暴しないっていうの」と和平条約を持ちかける、というもの)


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