#55【症例報告】お尻の痛みを足関節の調整で取る。
この前、なんだか施術がガツンと決まったので書きます。
お尻の痛みが足関節の調整で改善した話です。
1.症状:お尻の痛みは坐骨神経痛であろう
患者さんの主訴は座位でのお尻の痛みでした。
椅子に座っているとちょうど坐骨のところが痛くなってくるそうで、悪いときにはピリピリとしびれるような感じもするということでした。
ピリピリとするということは、やはり神経の問題を疑いますよね。
お尻で神経の問題と言えば、坐骨神経痛でしょう。
坐骨神経痛と言えば、いつも悪者扱いされるのが梨状筋です。坐骨神経は梨状筋の下をくぐっていたり、梨状筋の筋中を貫いていると言われており、梨状筋の緊張は坐骨神経痛の引き金になりやすいと言われています。
もう一つ、これはたまに耳にするのですが、ハムストリングも坐骨神経痛の原因になる可能性があるようです。
特に大腿二頭筋は坐骨神経のすぐ真横を走行しています。また大腿二頭筋は坐骨結節に付着するので、座っていて坐骨が痛いというのは、大腿二頭筋が少なからず関与しているのかもしれません。
いずれにせよ、殿部から大腿後面の筋緊張が坐骨神経にストレスをかけることで坐骨神経痛が出ているというのが通説です。
そして今回の患者さんは、普段から坐骨神経のストレスが亢進している状態で座位になることで、坐骨神経がさらに圧迫され、疼痛が発生していたのではないでしょうか。
2.施術:足関節の調整
お尻が痛いということでお尻に施術をしても、さほど効果はありませんでした。そこで、足関節の調整を実施しました。
その患者さんは、自然体で足関節が底屈位になっており、背屈制限が著名にありました。
足関節の背屈に制限があるということは、立位で脛骨が前傾しにくくなっているので、体の重心が後方に移動してしまいます。
重心が後方に移動してしまうと、体の後方の筋がより収縮して身体を支える必要があります。
梨状筋や大腿二頭筋は体の後方の筋肉ですし、姿勢補助筋としての役割もありますので、後方重心はこれらの筋にストレスを与えてしまうことが考えられます。
しっかりと足関節の背屈ができるように、前脛骨筋や足趾の伸筋を動かしていきます。そして距骨を足関節の後方へ押し込むと共に、下腿後面のストレッチをしっかりと入れました。
縮まなくなっている前方を収縮しやすくして、普段縮みっぱなしの後方を伸長していくのです。
下腿のストレッチを入れましたが、アキレス腱ばかりが伸びて、下腿三頭筋の筋腹には伸長感が無いと言っていました。
ついでに大腿二頭筋もしっかり刺激を入れてゆるめていきます。大腿二頭筋が坐骨神経痛に影響している可能性がある他、大腿二頭筋は足関節の背屈制限を助長している可能性があります。
大腿二頭筋は腓骨頭に付着しており、それが腓骨頭を後方に引っ張るとテコの原理で外果が前方に出てしまいます。
足関節が背屈する際、前方に出ている外果は邪魔になります。
足関節の背屈制限をみる際は、私は大腿二頭筋も施術をしてあげるほうが良いと思います。
3.検討
以上のように足関節の調整を実施した結果、この施術後にお会いしたときにはお尻の痛みが無くなったと言っていました。
どうやら足関節の調整がお尻の痛みに対して効果があったようです。
足関節の背屈制限は重心を後方にずらしてしまうことで、骨盤も後傾位となり、股関節を外旋させてしまうことが想像できます。
股関節の外旋は梨状筋の作用ですので、長期の股関節外旋位は梨状筋が短縮し緊張してしまうことが考えられます。
また、下腿のストレッチを再度入れてみたところ、下腿三頭筋にしっかりと伸長感が出ているようでした。
これは足関節のアライメントが改善することで、筋が適切に作用できるようになったということかもしれません。
施術する際は重心位置を考えてみると面白いかもしれません。
普段の姿勢が崩れていると適切な重心位置も取りづらくなりますし、重心のズレは案外大きなストレスと体に与えているようです。
そして重心の位置は多くの場合足関節の状態で決まるように思います。
足関節がいかに大事かという話にもつながってきますね。