#68【運動連鎖】寛骨の運動について
1.前提
寛骨は内旋、外旋のどちらかをします。一般的には骨盤の前方が開くのをアウトフレア、前方が閉じるのをインフレアと言うようですが、恥骨結合があることを考えると、こうした運動はあり得ないと私は思っています。
寛骨は仙骨の耳状面上で動きます。
仙骨耳状面の前方に関節面が移動すれば寛骨は内旋、耳状面の後方に関節面が移動すれば外旋します。
左右の寛骨は連動します。左の寛骨が内旋すれば、右の寛骨は外旋します。逆も然りです。
そして内旋した寛骨は同時に外転します。外旋した寛骨は同時に内転します。
ここは仙腸関節塾の塾長である吉岡先生の仮説に寄ります。私には詳細に説明することができませんのでそういうものだと思っていただければ・・。
2.受動か?能動か?
本題はここからです。
寛骨の運動は「内旋+外転」「外旋+内転」の2つしかないのですが、この2つの運動は根本的に異なります。
それは受動的な運動か、能動的な運動か、という視点です。吉岡先生の仮説のミソにもなっているところです。順番に説明していきます。
仙腸関節に存在する靭帯は、仙結節靭帯、仙棘靭帯、骨間仙腸靭帯、長後仙腸靭帯などがあります。前の3つは「内旋+外転」を制限する靭帯で、長後仙腸靭帯は「外旋+内転」を制限する靭帯です。
何が言いたいかと言うと、寛骨の運動は「内旋+外転」を制限する靭帯の方が多いということです。
制限する靭帯が多いということは、その運動は抑制されやすいということです。
抑制されやすいということは、裏を返せば、その運動が受動的に起こりやすいということでしょう。運動しすぎるのを予防するために靭帯を張り巡らせているのです。
では「外旋+内転」についても考えます。
「外旋+内転」は靭帯による抑制が弱い運動です。抑制が弱いということはその運動が起こりにくいということで、こちらも裏を返せば能動的に運動する必要があるということです。
これは股関節の筋を見ると合点がいきます。
寛骨の外旋は股関節の外旋と連動します。股関節の外旋筋は、外旋六筋、大殿筋、中殿筋など多くの筋があります。一方、内旋させる筋は極端に少ないです。大腿筋膜張筋や小殿筋くらいでしょうか。
外旋筋が多いということは、それだけ能動的に運動する必要があると考えることができます。これは靭帯による運動制限の考え方とも合致します。
3.まとめ
まとめますと、
以上のように、寛骨には「内旋+外転」「外旋+内転」の2つの運動しかありません。そしてその2つの運動は、受動的か能動的かという点で根本的に異なる運動となっています。
※ここから先は余談です。
受動的、能動的という分け方は興味深いものです。
ちなみに、受動的な「内旋+外転」は左寛骨、能動的な「外旋+内転」は右寛骨です。
これは大脳半球の性質ともリンクしています。言語野がある意志的な左脳に支配される右寛骨が能動的、言語野のない受動的な右脳に支配されている左寛骨が受動的。
面白いと思いませんか?
参考図書・文献
John Gibbons、骨盤と仙腸関節の機能解剖、2019、医道の日本社