#27【症例報告】仙腸関節障害への施術
最近、仙腸関節障害の疑いがある方の施術をさせていただいたので振り返ってみたいと思います。
1.症状の経過
発症当初はかなり疼痛が強かったようです。本人は「上半身と下半身が外れそうだった」と言っていました。
この表現っていかにも仙腸関節障害っぽいですよね。上半身と下半身のつなぎ目が仙腸関節ですので。
(医師の診断を受けたわけではないので、あくまで疑いです)
当初は腰からお尻にかけて全てが痛かったそうです。
次第に腰の痛みが落ち着いてくると、痛みが左の仙腸関節に限局されてきました。また、左の下肢にも痛みが走ることもあったようです。
私が対応したときはというと、左仙腸関節部の痛みだけが残っているような状態でした。
発症からかなり時間も経っていたので痛み自体はかなり改善していたのですが、それでもまだ5割くらい痛みが残っているということでした。
2.所見
左の仙腸関節部に熱感と圧痛あり。右は熱感も圧痛もなし。
座り姿勢はかなり左に重心をかけていました。
ニュートンテスト陽性(仙骨圧迫)。ヒブステスト陽性(若干)。SLR陰性。
一番気になったのは足関節の背屈制限でした。特に左は内反位にも偏っていました。
3.施術
痛みのせいで背中や腰殿部が緊張しているので、まずは全体的にゆるめていきます。ゆるめる中で左のハムは押したときの反応が強く出ていました。
足関節の背屈制限は股関節の外旋につながり、外側荷重へと繋がります。案の定、大腿部外側がかなり張っていました。押したときの反応もかなり強くなっていましたが、少し我慢してもらって丁寧にゆるめていきました。
(鍼灸では風市というツボがあるところで、風市は腰痛に効くツボであると言われています)
足関節についても背屈制限を解消するように施術していきます。
他動的に足関節を背屈させてつまるような方は、伸筋支帯を動かすイメージで脛骨前方の皮膚を動かしていきます。これは結構痛いと言われることがありますが、我慢してもらいます。
足関節のつまりが取れたら、距骨をしっかり距腿関節にはめ込み、はめ込んだまま下腿三頭筋のストレッチを入れます。つまりを取らずにストレッチを入れるのと、しっかりつまりを解消してからストレッチを入れるのでは伸び方が全く違ってきます。
4.施術効果の検討と解釈
大まかな施術内容は、股関節の外転筋〜大腿部外側をゆるめるということと、足関節の背屈制限を解消することの2つでした。
いずれも股関節を内旋方向に誘導するとともに、骨盤の前傾を促すような施術になります。加えて疼痛が出ていた左の足関節の内反変位を解消することで、左の股関節外転筋にかかっていた負担を解消できるようにしました。
私は仙腸関節について考えるときは、仙腸関節塾というセミナーで学んだ内容を元にしています。左脚に荷重をかけると仙骨の左側が前傾し、寛骨は内旋+外転します。しかし足関節の内反変位があると、左脚への荷重がさらに外側へと強制されるので、仙骨の前傾はより強くなることが想像されます。
仙骨の前傾が強くなりすぎると仙腸関節面(短腕側)において固着が起こり、仙腸関節後面(長腕側)の靭帯などに伸張ストレスがかかります。それが今回の仙腸関節障害の引き金になったのではないかと想像しています。
要するに、体の外側が緊張しすぎるとダメですよということですね。
施術後ベッドに腰掛けてもらいましたが、左に荷重をかけているような座り姿勢は解消されていました。
また立ったり座ったりという動作もスムースにできるようになっていました。主観的な痛みの強さも軽減していたので、安心しました。
下腿三頭筋のストレッチングだけは、自分でも継続して実施するように指導しました。
今後も経過を観察していきます。